REPORT
【レポート】サステナブルであるにはクリエイティブでなければならない vol.1・vol.2


「コロナは以前からずっとあった現代社会の「慢性疾患」を見える化しただけであり、 その本質は都市問題・環境破壊にある。14世紀のペストも、グローバル化と都市化とともに流行した」


「「ガリバー化」した人類の存在が地球環境に異変を起こし、続々と災害が起きているなかで、もはや対処療法では間に合わない」


「しかし、希望はある。コロナ禍によって、人間界が自然災害と切っては切れぬ縁であることが証明された今、人間界だけに閉じたシステムデザインから、自然災害に対処療法をするだけではなく、その変動にいかに臨機応変に対応していけるかが問われている」





こんにちは!UNIVERSITY of CREATIVITYでソーシャル映画上映をお手伝いさせていただく大学4年生の阿保利圭子です。

7月21日に行われたサステナビリティフィールドのウェビナー2週連続で行われた文化人類学者の竹村真一さんによる地球講義「サステナブルであるには、クリエイティブでなければならない」にパティシパンツとして参加させていただき、今回は第一回についてレポートします。

コロナ禍を経てサステイナビリティとSDGsをどう捉えるのか?
これからの創造性について地球視点からファクトと可能性について
「触れる地球」にリアルタイムに出てくる情報や映像に興味津々。
深い内容にわくわくする講義でした。



今回の参加者はレポートをさせていただく我々大学生4人と、
元パタゴニア日本支社長の辻井隆行様、そして某雑誌のライターのみなさん。

はじめに、UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)サステナビリティフィールドのディレクター、近藤ヒデノリさんからイントロダクションで、UoCは「すべての人類は、生まれながらにして創造的である」を理念に、創造性を「世界制作の方法」としてアップデートしていく研究機関であり、今回の講義はこれからのサステナビリティとクリエイティビティを考える上での「大前提」であり、21世紀の基礎教養であると紹介がありました。

第1回目の今回は「触れる地球」を使いながら、
前半
・地球視点から見たコロナ禍とSDGsの意味とは?
・コロナで問われた3つの距離感
後半
・地球視点でのこれからの創造性について
についてお話をきかせていただきました。


地球は臨月を迎えていた?


まずは、14世紀のペストと現代のコロナを合わせ鏡的に語る現代についての話から。竹村さんは、21世紀の現代にいつまで織田信長の時代の(平面の)地図で世界を見るのか?と問いかけ、「触れる地球」でリアルな地球状況を見ながら物を考えることが必要だと言います。開発に10年程かかったという「触れる地球」はリアルタイムの世界の状況がわかり、雲の様子、気温や海面温度も知ることができるデジタル地球儀です。



ここで驚いたのが、東日本大震災の際に起こった津波がどのように津波が広がっていったかも見られること。時速700kmでジェット機波の速さで地球の反対側にある遠くのチリまで津波は届いてしまったのがわかるのです。
竹村さんは今の時代は「地球の体温や体調」も感じられるようになる時代であり、「環境を守らなくてはならない」というのではなく、地球とのコミュニケーション、インターフェースが大事であり、現代はこうした地球や生命系とのコミュニケーションがバッドデザインなのではないかと話します。
 
そして、竹村さんは現代を「”臨月”を迎えていた時代」だと言います。
新型コロナウイルスが発生している今と同様、14世紀のペストの時も同様な問題が背景にあったと言います。。14世紀のペストはネズミに寄生するノミなどを発生源として、当時すでに始まっていたグローバル経済によって中央アジアから拡大した感染症であったと言います。


ペストの背景にあったのも「経済成長と都市の三密」だったと言います。当時のヨーロッパでも文明の発展につれ、都市が人間や動物の排泄物が集まった不衛生な状態であり、人口増大によって森林破壊をしていったことで、ネズミを食べるワシや狼などの肉食動物が消え去り、生態系が壊れていたのが遠因でした。
 
「すべてがシステム上で重なっている。感染症は都市化以降の問題とも言われており、14世紀のペストも現代と同様に「イケイケドンドンの経済」がその背景にあった」と言います。
 


 

人類はガリバー?

 
ここからは、地球と人類の「ファクトフルネス」について。
 
・文明の発展によって人類がグローバルに移動しやすくなった現在、毎年1億人が移動している。
・「メガシティ」と呼ばれる都市は、前回の東京オリンピックの時には東京とニューヨークの2都市だけだったのが、50年が経った今では40以上に増加。
・乳児死亡率も低下し、平均寿命も32歳から70歳まで伸びた
 
文明の発展により人類が偉大な進歩を実現した一方で、
「人口爆発」と「都市化」が大きな問題となっています。
 
・世界の人口はたった50年で、30億人から80億人
・この50年で都市化が急速に進み、都市に住む人口は20人に一人だったのが、現在では2人に1人となり、更に毎日23万人増えている。
・さらに環境難民、災害難民が仕事を求めて都市に流入し続けている
・現在の地球上の(哺乳)動物を体重を積算すると、人類と家畜が98%を占め、野生動物はたった2%しか存在しなくなっている。


たった50年ほどの間に、人類によって地球のバランスが大きく崩れている。
一番の問題は、人類がどれだけ大きなインパクトを地球にしている「ガリバー」のような存在であることに、まだ十分に気づいていないということだと言います。多くの国が食料を求めて世界中から食料を輸入しており、ブラジルでは、さらに肉の生産を増やすため森林がどんどん破壊されている。
 

日本人に馴染み深いマグロも、環境問題に影響を受けていると言います。プラスチックなどの海洋ゴミが海流によって集まる海域がちょうどマグロの通るルートに近いそうです。つまり、知らない間に食卓でプラスチックを口に入れる可能性があり、私たちが出したゴミが廻り廻って私たちに戻ってくるのです。

海亀の心配を他人事で言っている場合ではありません。




汚染問題では、今や戦争などの人間の暴力で亡くなる人より、大気汚染などの自然災害で亡くなる人の方が多く、大気汚染で亡くなる人は年間約720万人!一日に2万人にも及びます。また、インドにおけるトイレの普及割は4割であり、トイレ問題も大きな問題となっている。




「慢性疾患」を見える化したコロナ禍

 
竹村さんは、コロナは以前からずっとあった現代社会の「慢性疾患」を見える化しただけであり、 その本質は都市問題・環境破壊にあると言います。
 
野鳥などの生息地である「湿地」は50年で50%減少。また、熱帯雨林が減るということは、鳥の住処が半分になり、鳥も三密状態になることで一層菌の変異が起きる可能性も増えてきます。
 
最近、日本で水害が多発しているのも、湿地帯に人間が住むようになったからだと言います。昔は利根川は東京湾に流れていたのを徳川家康時代に、川を本来とは違う流れに無理やり移したため、台風の時には元々川であった水路に流れてしまい、洪水が起きてしまいます。利根川も、東京の東側も、そうした元々は湿地帯であった場所に人が住むようになったことで、浅草や隅田区のあたりは大洪水になりやすいのだと言います。
 
21世紀に入ってから世界の自然災害による経済損失は70%増。そこには人口と社会資産が何倍にもなっているのが関係しているそうです。竹村さんは「触れる地球」を使って、温暖化により北極の氷が溶け、地球全体を冷やす機能が失われている事実を見せてくれました。
 



「ガリバー化」した人類の存在が地球環境に異変を起こし、続々と災害が起きているなかで、もはや対処療法では間に合わないと語ります。
 


 
コロナで問われた3つの「距離」

 
竹村さんはコロナ禍によって3つの距離が問われたと言います。
 
1 人口爆発と都市集中による構造的距離
2 「遠いシステム」
3 地球環境・生命系との距離感
 
都市における三密の危険性は、まさに冒頭の14世紀のペストと合わせ鏡であり、遠くから人とモノを運ぶグローバルシステムの問題。そして、地球生態系との距離感。
 
大切なのは、全てがつながりあっているということです。たとえば、北極が氷の状態にある時は、夏に白いシャツを着ているような状態なので太陽熱をあまり吸収しないが、氷に覆われていない状態だと太陽熱を吸収し温暖化が一気に加速してしまうため、さらに温暖化が加速し、今まで起きなかった災害が起きている。北極の温暖化がロシアの熱波や各地での食糧不足を起こし、シリアの内戦やアラブの春など様々な問題が複合的に起こっていく。一見無関係のようで全部つながっている、相互依存の世界なのです。



また、人類は元々は物々交換でしたが、現代は水をはじめ、あらゆるものがお金で交換される世界となってきたなかで、気候変動によって食糧生産が大きな影響を受け、都市化が進み市場も乱高下する世界の危うさも指摘します。
 
前半のまとめとして、人類と地球のファクトの再整理とともに、すべてがつながりあっているなかで、対処療法ではなく、全体を捉えるシステム思考の重要性が指摘されました。また、参加されていた元パタゴニア日本支社長の辻井さんから、こうした世界状況に対して、いかに私たちが正しい事実を知って「判断」し、正しい「決断」をしていくのか。やっても無駄なことと、やらなくてはいけないことの判断の重要性も提起されました。
 


 

深化編「地球基準のデザイン」~その目線と尺度をブロードバンド化する





世界や日本の置かれた状況が「臨月」にあることを大いに感じさせられた地球講義の前半。リアルな数字や現状を知ることで「私たちにできることは本当にあるのか」と少し心細くなった私たちに、竹村さんは現在は「希望に溢れている時代」としてそのポジティブな可能性を語ってくれました。


コロナ前から見えてきた解決策

 
環境問題解決への取り組みは、今に始まったことではありません。最近はトレンドとして取り上げられることが多くなりましたが、長年研究をしてきた竹村さんは、現在は解決策が見えてきて、希望に溢れている時代になってきたと言います。その一つとして「再生可能エネルギー」を挙げます。



再生可能エネルギーの技術が近年圧倒的に進歩し、今や経済的にももっとも合理的なエネルギーとなっていること。それに対して印象に残ったのが以下の言葉でした。
 
石器時代が終わったのは、石がなくなったからではない。
石油時代は石油の枯渇を待たずに、イノベーションによって終わるだろう。
(サウジ石油相ヤマニ氏の名言)
 
オイルマネーで甘やかされて生きていたドバイの人々は、石油が尽きる前に次世代に「どうサバイバルをさせるか」と何十年も前からすでに考え、早い段階から再生可能エネルギーに注目して取り入れていたと言います。石油を売らずに生きていける多角的な中東の意識は、今後世界のイノベーションを起こしていく手本になるでしょう。
 
 

個人に何ができるのか?Utility 3.0の時代へ

 
ここで、みなさん「Utility 3.0」この言葉ご存知ですか? 
環境・経済・社会的にサステナブルな社会設計のための、基本思想の転換を示したもので、7つのフリーを掲げています。


1自立分散型でエネルギーをシェアしていく「Grid-Free」
2変動を前提とした文明設計による「Disaster-Free」
3多様性:システムとしてのレジリエンス「Oil-Free」「War-Free」
4資源の大量「消費」なしに便利で快適なライフスタイル「Carbon-Free」
5限界コストゼロ社会「Money-Free」
6可視性→ソーシャルリテラシー
7移動コストの低減→どこにでも住めるLiving Anywhere「Infra-Free」
 
竹村さんは、ムーアの法則によって幾何級数的に進化の進むテクノロジーを活用しながら、これまでの人間中心的な思考から、地球視点に、多中心的なマインドセットに変えていく段階にあり、企業や個人が自立分散的にシェアをして態度が大切になっていると語ります。
 
 

「99%はムダ」だからこそ、伸びしろがある




たとえば、電気を発電して実際に光を放つまでに何%のエネルギーが使われてるか知っていますか?
 
100%発電した電気に対して、白熱電球を光らせるために使われるエネルギーはたった0.7%だそうです。発電したエネルギーのほとんどが熱に奪われていて「無駄」だったと言えるしょう。このように20世期の文明は、その多くが温暖化、ヒートアイランド現象を促進した「無駄」でもあったと捉えることができる。しかし、竹村さんはこれを「伸びしろ」であると話しました。
 


コロナ禍が教えてくれたこと

 
これから大切になるのは人間基準ではなく、地球基準の社会設計であること。
例えば海面上昇に合わせた浮上都市や、急な自然災害に対応できる移動式コンテナハウスの普及など、一拠点にとどまるのではなく「逃げられる」など様々な拠点を持つことが必要となると話してくれました。
 
コロナ禍によって、人間界が自然災害と切っては切れぬ縁であることが証明された今、人間界だけに閉じたシステムデザインから、自然災害に対処療法をするだけではなく、その変動にいかに臨機応変に対応していけるか。


そうした自然界の変動を前提とした「人類と地球の創造的共生力」を築いていくことが本当の意味での骨太なクリエイティビティではないかと締めくくりました。