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New Economy

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2021.2.9 (TUE)
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【レポート】『共感資本社会と創造性』

資本主義は私たちを幸せにするのだろうか。社会のために働き、手に入れた経済的な余裕は、必ずしも個人のウェルビーイング(=幸福)にはつながらない。しかしその仕組みを、少しデザインし直せば、より暮らしやすく、かつ充実した生活実感を得られるようになるかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大は、人々にあらためてこのような働く意味を問い返している。株式会社eumo代表取締役の新井和宏は、こうした閉塞感をかかえる現代社会において、「eumo」(ユーモ)という地域や共感をコンセプトにした電子マネーをスタートさせた。

 

セッションはUNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)においてフィールドディレクターを務める本橋彩を聞き手に、新しい経済の在り方をめぐって新井の視野の広い見解が展開された。

 



#共感資本社会  #創造性 

「資本主義の行きついた現代において、働きがいや生きがいを感じながら幸せに到達することはどのようにして可能になるのでしょうか」(新井和宏)


「eumoは基本的には期限の付いたお金、腐るお金なんです。3カ月を期限にすることによって、循環経済をつくっていく」(新井和宏)


「わざと「いや、みんなマイノリティーでしょ」っていうことを言うようにしています。それを受け入れて初めて個を認めることになるのです」(新井和宏)


「僕には見たい社会があるだけなんです」(新井和宏)


「重要なことは、「本質」と「常識」の違いがわかるかなんです」(新井和宏)




共感を資本にする


本橋彩「UoCではクリエイティビティについて様々な観点から識者の方々にお話をうかがっています。新型コロナウイルスは脅威ではありますが、この逆境のなかで大きくゆらいでいる社会を新たにつなぎ直していくことは、非常にクリエイティブなことなのではないかと思っています。そしてその先にあるであろう未来の経済圏について考えるために、本日はeumo代表取締役の新井和宏さんをお迎えし、お金に振り回されない生き方、それから資本主義に振り回されない生き方を伺っていきたいと思います。」

 

UoCのテーマの一つ「一人一人がエンパワメントされる、より良い経済、世界を、どう創造していくのか?」


新井和宏「ありがとうございます。ではまずは自己紹介も兼ねながら本日のテーマに近づいていけるようお話させていただきたいと思います。私は大学卒業後、最初は国内系の信託銀行に、その後外資系の金融機関に勤めました。そもそも金融マンになった理由は、学生時代にお金に苦労したことと、バブルは終わりかけていましたが当時(1992年)の人気業種が銀行だったからなんですが、あの頃は「お金を稼いだら幸せになれるだろう」とシンプルに思っていました。でもみんながうらやむような年収をもらっていても、周りに幸せそうな人がそんなにいなくて「あれ、何なんだろうな?」っていうふうに感じてもいました。

 

その後ストレス性の難病にかかってリタイアしたんですが、2008年に、鎌倉投信という会社を立ち上げました。その時ファンドの監査が必要だったので、学生時代に働いてた監査法人の代表に15年ぶりに会いに行きました。この方はかつての私に「お金とは何か」という大きな問いを投げかけてくれた方なんですが、再会した時にも開口一番に「おまえ、宿題わかったか?」と言われたんです笑 しかし自分はこの時にもまた問いかけに答えることが出来なかった。だから僕はその問いの答えを探す旅に出る決意をしました。

 

その後鎌倉投信ではファンドマネージャーとして「社会のための投資」というテーマで仕事に取り組みます。しかしこのやり方では、お金を持っている人の資産を増やすことしかできなくて、お金を持っていない人に対しては何もできない。格差を助長することしかできない仕事を僕はずっとやり続けてきたということに気づきました。そういう疑問もあって、鎌倉投信が設立から10年経ったときにちょうど私が50歳だったこともあり、節目と思い退職し、設立したのがeumo(ユーモ)という会社です。」

 

世の中全体が経済的価値に強い執着を示していたバブル期に金融マンとしてのキャリアを歩み始めた新井だが、ここに語られるようにその歩みは決して平坦なものではなかった。経済成長も頭打ちになりつつある日本社会のなかで、新井は地域通貨に未来への活路を見出そうと活動をはじめる。

 

新井「eumoという会社名なんですけど、語源はユーダイモニアです。つまり幸福学、ウェルビーイングといった意味も含んでいるのですが、ユーダイモニアには持続的幸福という意味もあります。資本主義の行きついた現代において、働きがいや生きがいを感じながら幸せに到達することはどのようにして可能になるのでしょうか。

 

お金とは手放すことで幸せ(商品やサービス)を手に入れるものなんですけど、集めると幸せになれるみたいな、逆の考え方になっている部分もある。例えば不確実性の高い時代ですと、不安が増大するから結果的に人間は貯蓄という行為に出ますよね。こうした状況下ですと、人間は幸せの方向に向かわないんです。一方幸せな状態っていうのは、ワクワクしているときですね。そう考えると実は「不安」と「ワクワク」って、同じコンディションなのではないでしょうか。両方とも先のことがわからない笑 ですから不確実になったときって実はこの両方があるわけですが、どっちが出やすいかってときに、ワクワクで生きてもらいたい。

 

ではそれをどうやったら仕組み化していけるんだろうか。そこで人間が人間たるゆえんとしての「共感」を資本にしてみることにしました。これまでは数値化できるものがフォーカスされてきました。そうではなくて、あいまいだけど心地がいいもの。一つのメジャーで数値化してしまうと、GDPのように競う競争しか生まれてこない。そうではなくて、あいまいさを受け入れ、違いを感じ、そしてその中で、自分が自分らしく生きられるところを探す。そんな「共感資本社会」をテクノロジーのサポートによって実現するために、会社組織eumoを設立し、共感コミュニティ通貨という格差を生まない新しいお金の概念のデザインに取り組んでいます。」

 



 

循環をデザインする「腐るお金」

 

新井「では具体的に、共感コミュニティ通貨eumoについて説明させていただきます。eumoはQRコード決済の、いわゆるペイメントサービスの仕組みをベースにつくられた電子マネーです。この形式を選択した理由は、日本でこのサービスが2019年頃普及したので、システムコストを抑えられることと、誰もがお金をデザインできる時代をつくりたいという会社のコンセプトとも親和性があったことがあげられます。

 

誰もがお金をデザインできる時代をつくりたいというのは、要は自分の小さなコミュニティの中で、循環するお金を定義できる仕組みをつくりたいということです。つまりこれは地域通貨の試みにあたるわけですが、旧来的な地域通貨は自治体がやる、地域金融機関がやる場合、コストが数千万円かかるんです。しかしペイメントサービスが普及した現在であれば、仮想通貨、電子マネーですとコストを相当抑えることができます。私は小さなコミュニティでも地域通貨でやり取りできるようになることが重要だと考えています。なぜならそうすると小さなコミュニティでしか需要のないモノをビジネスとして成立させることができるようになり、個人がエンパワーメントされる条件がより多様になるからです。

 

お金って共同幻想なので、みんなが1万円と思えば1万円なりますよね。それが成立するインフラ自体を提供できるかどうかというのが、私たちの挑戦です。それとお金は一番儲かるところほど流動性が高くなるので、どうしても都会に集まりやすいという特性があります。ですから、コミュニティにお金が落ちていくような、一方通行のデザインをお金に持たせる。これが地域通貨を選択したことの理由でもあります。


https://currency.eumo.co.jp/


それと格差が生まれないよう設計にも配慮しました。eumoは基本的には期限の付いたお金、腐るお金なんです。3カ月を期限にすることによって、循環経済をつくっていく。期限が切れたお金は、その処分案をコミュニティで決めることができます。そうすることによって、自分たちの共通の財布という、認識を持ってもらうことができます。そして最後に付け加えておきたいのは、ギフト機能とコメント機能が標準装備されていることです。ギフト機能は、いわゆる海外のチップです。そしてコメント機能は、お店への感謝を表現する手段です。お金は「ありがとうの循環」。だから多く払いたいはずなのに、今の日本円って多く払いたくなくなるようなバイアスが掛かっているんですよね。だからそれを払拭するためのメカニズムとして実装しました。

 

また仕組みづくりとして工夫しなきゃいけないのは、いわゆるギバー、テイカー、マッチャー[註1]のタイプ分けでいうところの、テイカーが来ても面白くないメカニズムをつくることです。これは鎌倉投信でもやっていたのですが、基本的にテイカーはギバーを食い物にしてしまうので、テイカーが来ても面白くもなんともない仕組みをデザインしてあげることはすごく大事なポイントです。誰でも入れる仕組みなんだけれど、入っても面白くないものにすることによって、ギバーのセーフティネットが機能するようにしています。現在NECさんと実証実験しながら個を生きていただくためのインターフェースを作り始めていています。個人のパーソナルミッションとかソーシャルアクションとかをプロジェクト化したり、それらに共感してもらう人やお金を集めたりできるプラットフォームに進化する予定ですので、楽しみにしていただけたらと思います。」

 

仮想通貨であること、特定の場所でしか使えないこと、使用期限があること。お金の仕組みを考え直すことが、より多様な生き方を促す。新井の実践するeumoは、キーワードとしてあげる「共感」のあいまいで抽象的な響きとは対称的に、徹底して考え抜かれたものだった。格差や不公平感が出ないように使用期限を設けることや、受け取ってばかりで、自らはなにも与えようとしないテイカーが得をしない設計などからもそのことはうかがえるだろう。ではそのシステムは、既存のシステムとどう異なるのだろうか。

 

新井「僕たちはそんなすてきなコミュニティが立ち上がるように応援していかなきゃいけない。今はその対応に追われているような感じです笑 でもギブするのが楽しい仕組みなので、そうなると要は「ギブできる人って、お金を持っている人でしょ」っていう論調も生まれてしまう。それをクリアしていくための仕組みづくりも進めています。ギフトしていった過去の履歴を信用枠にして、現状の金融機関の信用とは異なるあり方を提案していきたいと思っています。

 

本橋「お話を聞いていて中国の芝麻信用[註2]を連想したんですけれど、似てるようで全然違いますね。属人的な芝麻信用と異なり、eumoは贈与が出来る。」

 

新井「おっしゃる通りです。中国の信用スコアは現在の資本主義を前提にした中でのテクノロジーの使い方であるのに対して、eumoは新しい社会におけるテクノロジーの使い方です。そういうかたちになっていけば、ギブする人が増える。そもそも皆さんが生きているっていうことはお母さんから贈与を受けて生きているので、自分自身がギフトなわけです。だからペイフォワードしていくのが当たり前の話であって、ギブするのは「当然だよね」と思えるはずなんです。ギフトを受け取ってから、誰かにギフトするっていう発想のほうが、人はより幸せになれるんじゃないか。それをどうデザインしていくのか。どう社会に実装していくのかっていうことを実証しながら考えています。

 

 


みんながマイノリティー


共感コミュニティ通貨eumoによって新井がデザインする新しい資本の循環。ここまではその仕組みについて話題が話されたが、人を幸せにするというその社会は、いったいどのようなものなのだろうか。新井は、全員がマイノリティーであることを受け入れる社会を目指していると語る。

 

新井「まず自分自身の話からすると、研究者にあまりなりたくなくて、実践者になりたいというか、現場にいる人でありたい、行動する人でありたいというのはすごく思っています。

僕が考えている未来は、一人一人が輝いているようなものです。

 

最近次の2つの言い方で私の考えを伝えています。1つは個が輝くことはどうすれば可能なのかという話です。どうしたら皆さんそれができるか悩まれているじゃないですか。それを解決するひとつの考え方として、全員がマイノリティーであるということを受け入れるのが重要だと思っています。マジョリティ―にいたいと思っている以上は、多分自分が輝くのは無理なんです。だって個が輝くってそれぞれが違うっていうことを認め合うことだから。マジョリティ―にいようとするっていうのは、「同じですもんね」って言いたいだけ。みんな違っていることを認め合って、この部分では意見は一緒かもしれない程度であるべきなのに、マジョリティ―にいますっていうことが中心になってしまう。時代が変わっていく中で、変わっていかなきゃいけないんであれば、変えなきゃいけないこともあるにも関わらず。だからわざと「いや、みんなマイノリティーでしょ」っていうことを言うようにしています。それを受け入れて初めて個を認めることになるのです。

 

あともう1つは「江戸化」です。資本主義によってある種江戸時代的な、それぞれが自営で適当にやっていた時代から、みんなで集まって大きな資本の中で大量生産することによって経済成長ができた時代になった。ただしそれが行き詰ったとき、テクノロジーにサポートされながら新しい江戸のかたちができるんだろうなっていうことは思っています。

 

本橋「人にはどうしても共通項を見いだすことで安心したいという面がありますが、一人一人は違うものですからね。非常に納得のいくお話です。次にお伺いしたいのは、格差や貧困といった資本主義のジレンマについてどう向き合っていくのかということです。今のご意見をお伺いできればと思います。

 

新井「資本主義はすごく機能していたと思います。でも今の時代になってきたら副作用のほうが大きくなっちゃったっていう状態だと思うんです。環境問題も、格差の問題もそう。社会課題が解けないというのもそうです。数値化できる範囲内でビジネスによって解決をしていく範囲がもう規定されちゃっているので、それを超えることができなくなってしまった。この先どういうふうに進んだらいいんだろうか、っていうのが皆さんの問いなわけです。じゃあこの資本主義をどう修正するかっていう話があるんですけど、人々は資本主義、社会主義のように二項対立で比較してわかりやすくしたい。

 

でもそれに対して、僕は学者じゃないから「どうでもいい」って言っているんです笑 アダム・スミス研究の第一人者でおられる大阪大学の堂目卓生先生と飲みに行った時に、僕が「共感資本社会」という言葉を使っていることに対して先生から「新井さんは、何で主義取ったの?」って言われたんです。そこで僕は、「主義ってイデオロギーでしょ、そうすると対立を生むだけ。僕は対立を生みたいんじゃなくて、多様性を織り込みたい」って言ったんです。またこうも言いました。「僕は学者じゃありません。先生は資本主義について語らなきゃいけないかもしれないけど、僕には見たい社会があるだけなんです。だから主義は取りました。資本主義でも社会主義でもこれはありません。そういう社会をみんなと創造するっていう表明です」とね。そうすると大体の人は、「うーん。あいまいで何言っているかよくわかんない」とか言われるんですけど笑

 

でもあいまいさを受け入れることがすごく大事だし、目に見えないものを信じる力を取り戻すことが大事なんです。人は目に見えないものにおびえています。それは数値化できないものや資本主義では計算できないものです。僕は金融工学をずっとやってきて、数値化するっていうこと自体に対してすごく関心を持っていました。でもその限界を自分の中で感じ取ったので、じゃあ本当に目に見えない大切なものを大切にできる社会を、みんなと一緒にデザインしない限りこの先はないなと思っています。

 

別に数値化が悪いわけじゃないんですが、ただ人間っていうのはわかりやすいものが優先されちゃうんです。わかりにくいもの、見えていないもの、「無駄じゃない?」みたいなことを効率を追おうとすればするほど見失うんです。そこで見失っている自分に気付ける感性があればいいんだけれど、感性も失ってしまったら元も子もない。例えば昔は何かこう食べたときに「ん? 腐っているかもしれない」って感じる力があったんだけど、それがあまりにもなくなってしまっていて、感性を信じることができなくなってしまう。

 

そしてそうなってしまうと、マイノリティーを認めないことにもつながりかねない。標準的に分析されたもののすべてが正しいと思ってしまうと、自分を見いだせなくなる。自分自身が何か、何者なのか。自分自身にとってこれはいいのかっていう判断軸がどんどんなくなっていって、数値化されているものしか信じられなくなる。そしてそれが、個性を殺していくんです。その危険性を感じていれば全然いいんだけれど、片方に寄ってしまうと、バランス感覚としては悪いですよねって僕は思う。」

 

本橋「「あれ? これいつもと違う」とか、「これなんかおかしくない?」っていう枠組みを疑う感性がないと、イノベーションも生まれてこないし、自分自身をそもそも見失う危険性があるということですね。」


左:本橋彩(UoC フィールドディレクター) 右:新井和宏(株式会社eumo 代表取締役)

 



「本質」と「常識」の違いを見極める


仮想地域通貨の具体的なシステムのデザインから、資本主義の問題点とそれを突破するための鍵として感性が重要であるという提言まで、ここまで多岐にわたる話題が議論された。そしていよいよ、セッションのタイトルにもなっている「共感資本社会と創造性」についてトークは展開していく。新井にとって創造性の発揮や、発想の転換のために必要なこととはいったいなんなのだろうか。

 

新井「よく「常識を疑え」みたいなことを言うんですけど、それについてまず前提として重要なことは、「本質」と「常識」の違いがわかるかなんです。この違いがわからないと、発想の転換をさせる場所がわかっていないことになっちゃう。そして本質を理解するためには、善良な問いが必要なんです。問い続けると本質が見えてくるんですが、問い続けないと、または善良な問いを持たないと、本質は見えてきません。

 

本質は変わりませんが、常識は変わります。間違って本質を常識だと思ってしまうと変えてしまったり、逆に常識を本質だと思ってしまって変えないっていうこともある。ここがわからないと、変えるところがわからなくなってしまう。ここを問う力が重要で、その問う力の根本が「哲学」なんです。でも現代社会は哲学不足です。鉄分不足みたいなもんですよ。

 

何で哲学が不足するかというと、客観的に見るとそれがただただ非効率だからです。そんなこと考えて何の意味があるんだっていうふうになる。「そんなことやるぐらいならとっとと仕事しろ」みたいな話が往々にしてあるんですけど、でもそれを繰り返さないと結局本質は見えてこない。いろんな相談を受けた時に感じるのは、例えば今は閉塞感があるから、新しい仕組みをつくるということが目的化されちゃうんです。それでいて大企業の場合は、自分たちのお給料を前提にするっていうのが枕詞に全部付きます。この年収を維持するためには事業規模として100億円以上のものにならなきゃいけないって。わけわかんないですよね。本質じゃないことを本当によくしゃべれるなって僕は思うんですけど。「いや、そこじゃないでしょ」と。

 

すべてをフリーにしたときに、そのこと自体の本質がどこにあって、それをどう実現したいかっていうことがあればいい。でも順番が逆になっただけで、答えがまるで違ってきてしまう。だから本質的な議論ができるためには、その人の哲学というのがすごく重要になってくるんですが、それをすっ飛ばして効率を選んでしまう笑 ここが創造性にとって一番難しいところです。

 

本橋「昨今は様々な業界で哲学の重要性が語られていますが、和宏さんはご自身で哲学書を読んでらっしゃるのか、どなたかとお話をされているのか、どちらなんでしょうか。」

 

新井「やっぱり仲間からの影響が大きいですね。はたから見ると七面倒くさいやつらですよね。そんなのをお酒のつまみにずっとしゃべっています笑 例えばダイヤモンドメディアっていうベンチャー企業をつくって、それを手放してeumoに来た武井浩三っていうのがいるんですけど、彼は「組織自体を極めていこうとしたら、結局人の営みにしかなりませんでした」ってことを、昨日はしゃべっていました。

 

人に依存しない(属人化しない)組織の在り方とかをずっと彼は考えていたんだけど、最終的に行きついたのは結局、組織は人に依存して形成されるっていうことにいきついた笑 そういうものを考える仲間たちがいるからこそ、自分はまた考える力を持てるっていう相乗効果があります。だから一番いいのは、本質を議論できる仲間の存在ということですね。

 

人と人のつながりによって成り立っているものって癒着とかネガティブな方向で語られることもあるじゃないですか。でもすごい経営者はつながりが価値だってみんな言っているんです笑 だからそれは否定できないはずです。「しょせん会社って人の営みじゃん」ということです。で、それを超えることはないんだっていうことを僕はずっと言っています。だから人を見なきゃわからない。会社に投資をする上での判断もやはり人です。」

 

いまや地球規模で連動し、日々その価値を変動させている資本。その在り方をより地域に、共感に引き戻そうとする新井の実践は、「本質」と「常識」を問う哲学に支えられていた。最後に本橋は「良い問いを立てるためのヒント」を新井に尋ね、セッションは締めくくられた。

 

新井「やっぱり筋トレじゃないですけど、トレーニングが必要だと思うんです。善良な問いをつくっていくためには日々問い続けないと、良い問いはつくれない。すばらしい人、問い続けている人と出会うこと。本質的な問いのある本に出合うこと。旅に出て違う環境の中で新たな自分の感覚に出会うこと。こういった日々のトレーニングが善良な問いを生んでいくんだと思うんです。だからまあ、さまよい続けるということですね笑

 

本橋「違う場所に行くっていうのは、自分が違う者である、マイノリティーであるってことを感じることでもありますよね。」

 

新井「マイノリティーであったり、お金を手放すっていうと、不安が先行してしまうと思うんです。でも実際は単純にそれに慣れていないだけですから。慣れたら思考は変わるでしょう。

 

僕は金融マンとして、いろんな方を見てきましたけど、やっぱりお金ためる人って不安の総量に比例するんです。将来に対する不安がある人ほど貯蓄するんです。でもそれを墓場に持っていってもしょうがないじゃないですか。お金にはそういった特性があるんですが、だからこそ人を信じる力を取り戻すっていうことが、これからの時代に必要だと思っています。じゃあその共助の仕組みをどうデザインするかが、共感資本社会の鍵。これからさまざまな社会実験をeumoは続けていきますので、ぜひぜひ皆さん、まずはアプリをダウンロードしていただけたらうれしいなと思います。」

 

 

[註1]ギバー、テイカ―、マッチャ―とは、アダム・グラントが提唱した人間のタイプ分け。アダムによれば、ギバーは人に惜しみなく与える人、テイカーは真っ先に自分の利益を優先させる人、マッチャーは損得のバランスを考える人とされている。詳しくはアダム・グラント著・楠木建訳『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房、2014)を参照。

 

[註2]芝麻信用(ごましんよう)とは、中国モバイル決済のAlipay(アリペイ)のアプリに搭載されている機能。詳細は公表されてないものの、「学歴」「勤務先」「資産」「返済」「人脈」「行動」(ショッピング・金融商品の利用状況や公共料金支払い状況)の5つの指標の組み合わせで採点されたポイントが高ければ高いほど、ローンの金利が優遇されるなどユーザーにはメリットがある。