REPORT
New Economy

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2020.6.25 (THU)
18:00 @
【レポート】創造性から生まれるニューエコノミー

データサイエンティストの宮田裕章と、経済学者の安田洋祐がカタリストとして登壇。

UoCフィールドディレクターの本橋彩が進行する。


新型コロナによる体験を通して、世界で同時に、個々人がこれまでの常識を疑いはじめ、自分にとって大切なもの、必要のないものに気づきはじめている。その気づきを、個人レベル、組織レベルで、ニューノーマルとして変えることができるのだろうか?定着させることができるのだろうか?わたしたちはどう変えたいのだろうか? いま個々人の意思が大切になっているのだ。


感染症対策は制約を生み出したが、日本人は制約の中から新たなことを生み出すことが得意でもある。“感染リスクが低い”“安心を届ける“など、具体的な課題があるとサービスやプロダクトで答えはじめている。飲食業や観光業はいち早く取り組み、小さな動きやローカルな動きがどんどん生まれ始めている。新たなフェーズに自ら変わっていける人は、次の世界でイニシアティブを取れる可能性が高いだろう。いまがまさに創造性を発揮するチャンスなのだ。


これまではプロセスに価値があったものが、コロナの制約によって解き放たれ、“働き方”“サービス”さまざまな行動の本質が問われ、さまざまな選択肢が生まれつつある。それぞれの利点を汲み取りながら、どのような新たな価値を創造していくのか。今まさにクリエイティビティの力で、一歩先のものを掴み取り、ニューエコノミーを生み出すタイミングである。


ビッグデータ、エコノミーの最前線にいる二人が「創造性から生まれるニューエコノミー」について話す。



[概要]

日時:2020年6月25日(木) 18:00~20:00

会場:UNIVERSITY of CREATIVITY(赤坂本社23階)からオンライン配信

カタリスト:宮田 裕章さん(慶應義塾大学医学部教授)

安田 洋祐さん(大阪大学経済学部准教授)

モデレーター:本橋 彩(UNIVERSITY of CREATIVITY プログラムディレクター)

パティシパンツ:今井さん、蔵下さん、黒田さん、吉岡さん


#ニューノーマル  #ニューエコノミー  #BigData  #資本主義その先 

エコノミーにおけるCREATIVITY


宮田:社会というのはつながっていて不可分であり、一人ひとりの、何を食べて、何を着て、どう学んで、どう働くか、どう生きるか、あらゆる行動が世界に影響を与え合っています。産業革命以降は特に経済合理性のなかに人が飲まれていって、歯車のようになっていました。けれどいま、感染症や環境問題などを通して、データを軸にいろいろな価値を可視化することによって、お金以外のものでこの社会が動き始めています。お金ではないもので社会を回していく、この世界を共有していく。それが新しい価値でもあり、結果人々は社会のシステムの歯車ではなく、一人ひとりの生き方を響き合わせながら、多様な社会を創っていく。多様な社会をいままさに新型コロナに対峙しながらつくっていて、ここから世界は新しいフェーズに入っていくのだと思います。
 
安田:筋のいい仮説(良い問い)を立てた瞬間に、プロジェクト全体がものになるかどうか分かるくらい、業種を問わず、仮説立案能力が非常に重要だと思います。仮説に基づいて試行錯誤した結果失敗したら、それは意味のある失敗です。日本には仮説を立てた上での意味のある「失敗」と、適当にやってうまく行かなかった「間違い」を区別していない人が多いかもしれません。仮説をきちんと立てられる人はクリエイティブな人だし、それに基づいてプロジェクトを走らせると、結果として長い目で見れば、筋のいい、成功するイノベーションとアイデアが生まれると思います。
 

創造したいミライの経済




宮田:貨幣の価値で変換できる部分で社会を回して、合理性のなかに人生を捧げるところからの転換です。人々の生きるというものが先にあり、自分が社会にどういう貢献をしたいのか、どういう価値をつくりたいのか、それぞれの多様な“生きる”“働く”を響かせながら、多様な社会を創っていく。安田さんのお話にもあったように、これまでは完成された世界のなかで問題を解く力が大事でしたが、これからはやはり問いを立てる、仮説を立てる力が重要です。それがクリエイティビティであり、「なぜ」と疑問に思うところに新しい価値を発見して、働いたり、過ごしていくということが、これからの経済であり、この社会を創っていくと思います。
 
安田:やりがいを感じられて、同時に安心できる社会というのが重要だと思います。その2つは往々にして、トレードオフの関係になりがちです。これまではアングロサクソン型の株主資本主義で突っ走った先に、ビジネスが生まれ、成功者は経済的には報われました。結果、格差が拡大し、政治の影響などもあり、アメリカの医療制度は悲惨なことになっています。日本は安心な社会、国だと思うので、どうやって個々人のチャレンジ、試行錯誤、新陳代謝を安心型の社会に入れ込んでいくかということを考えています。
 
以前対談した経済学者のスティグリッツ氏がこの数年考えていることは、ほぼ格差問題です。資本主義の弊害と思われているものは、ほぼ格差問題で、特に先進国が深刻です。格差を解決すると、いま私たちが抱えている課題がほぼ解決すると考えられています。
 
宮田:スティグリッツはGDP指標の限界も指摘しています。そして、幸福度指標やウェルビーイングが大切と言っています。いま経済が所有で測れるものではなくなってきています。GAFAなどが台頭し、時価総額上位企業はGDPに含まれないデータを扱います。期せずして時代がGDPでは測れなくなっています。
 
安田: GDPの弊害は大きく2つあります。1つは、GDPは、市場で取引される価格がついているものに対して金銭換算で算出している点。経済的に非常に価値があっても市場で取引されていない家事などは含まれません。情報も含まれません。スマートフォン端末の購入費や通信料は計上されますが、わたしたちにとって価値のある情報やサービスは含まれません。
もう1つは、暮らしぶりの豊かさとは直接関係ないものが、逆にカウントされている点。例えば医療費。アメリカはGDPの2割が医療費で、病院に行くと高額の医療費がかかります。GDPが多いから豊かなのかというと真逆です。訴訟費も似ています。弁護士、裁判費用がGDPに計上されます。弁護士費用が大きい国のほうが豊かなのかというと、違いますよね。GDPは豊かさと関係するものばかりではなく、むしろ逆のものもあることが、新型コロナでより顕著になりました。
 

世界と日本の経済のイマ




宮田:これまでは資本主義に対する軸として環境などがありましたが、新型コロナで命を守りながら、どう社会を回していくのか各国が対峙しています。アメリカでは、これまではアメリカンドリームで格差に目をつぶっていた側面がありましたが、新型コロナによって格差が表面化しました。弱い立場の人々はソーシャルヘルスへアクセスができず、医療が十分に受けられず、密で粗悪な環境に住んでいるケースが多い。そしてエッセンシャル・ワーカーとして働く必要がある。さらに、Black Lives Matterの出来事なども起こり、民主主義の根本にも人々は対峙しています。アメリカだけではなく世界中が、いまあるべき経済と国の姿と向き合っています。この経済合理性とは違うどのような軸で、社会をどのようにしていくのか?の問いを、みなが立てています。テックジャイアントも「All for Good」「All for Social Good」「Data for Good」と、データを使って人々へ利潤をシェアする方向に向かっています。これは止むをえない側面もあります。2018年のEUでGDPR(一般データ保護規則)が設定され、消費者に説明責任を果たさないと、データが使えなくなりました。データは所有した者勝ちではなく、共有されることに価値があるので、説明責任を果たさないと、利潤すら回せない。そこで、お金だけではない多元的なGoodが動き始めています。医療、人権、格差、環境、教育など、多元的な軸。データで可視化されて、経済が回り、社会そのものが創られていくというフェーズが、世界中で立ち上がり始めています。
 
安田:3つの動きがあると思います。1つ目は、環境が旧来型の資本主義と対峙する大きい軸になっているという宮田さんのお話を体現しているESG投資、SDGs。環境、社会、ガバナンスに配慮していない企業には投資しない、出資しないという、金融面から迫るアプローチです。資本主義の仕組みを土台に、ESGに配慮しない企業にはお金が回らないようにすることで企業の経営方針を変えていく。
2つ目は、ヨーロッパを中心に起きていた消費者の意識を変えるアプローチです。環境配慮していない企業の製品を積極的に買わない機運をつくる。
3つ目は、社会のために活動している企業や組織を、ステークホルダー(従業員、顧客、投資家、地域社会他)が支えたいと思わせるアプローチです。資本主義の大枠を残しながらルールを少し変えていこうとしている。
 
宮田:World Economic Forumが、今年は「グレート・リセット」、そしてステークホルダー資本主義だと言っています。これまでのように株主の利益だけを最優先し、短期利益の中で浅く回していくのではなく、ステークホルダー全体にとっての価値をより高めていく。金融だけではなく、SDGsやシビックプライドのような軸が、社会をドライブする力になっています。
 
安田さらに進化させるために重要なのがビックデータです。地域に貢献しているとか、従業員がやりがいを持って働けているというデータが取れるようになると、お金だけではない多元軸で、人や企業がフェアに評価されるようになります。指標となるデータをどう取るか、バイアスのない形でどう指標化していくか、というのが重要になっています。それができればお金一辺倒ではないエコシステムを生むことができ、人々の創意工夫、やりがい、新陳代謝が生み出せます。
 

 

大きく変わる生活の中で、どう創造性を発揮していくのか?

 
宮田:ビッグデータをあらゆる企業が使い、生活や経済活動を回していくデジタルトランスフォーメーションが始まっています。平均に合わせる世界だったのが、ビッグデータとAIで個別最適、インクルージョンして、一人ひとりをエンパワーメントする世界に変わってきています。
 
安田:そのような動きは、経済と政治にも現れています。経済では、これまでの製造業は大量生産・大量消費。種類を限定して大量につくり、単価を下げ、スケールメリットを上げるのが、経済モデルでの勝ちパターンでした。ニッチなマーケットに大企業は食い込めないので、エッジの効いた小さいマーケットもある程度共存できていました。ビッグデータの活用が進むとビッグデータを保有する企業ほどカスタマイゼーションができるようになり、末端のニッチなところまで全部取ってしまう危惧、富が吸い取られる危惧があります。そこで、いち早く政治的に対応したのがヨーロッパです。
政治では、イギリスの EU離脱のように、一人ひとりにとって実際に重要なのは国全体よりも、自分の暮らし。全体がマイナスでも、自分は変わらない、むしろ得する人は気にしないことが分かりました。
政治の世界でもビジネスの世界でも、平均を見ることが国全体、企業全体、あるいは業界全体を見ることと矛盾しなかった状況から、一人ひとりミクロに見ていかないと意味のある仮説が立てられない状況に移行しています。
 
宮田:そのような中で、私たちはどのように創造性を発揮していけるのでしょうか?デジタルトランスフォーメーションで初期の勝者はやはりGAFAなど、アメリカ、中国の企業です。でもそれは新しい社会の序章でしかなくて、一元的な合理性の価値軸では、初期の勝者はシンプルで非常に強いですが、多元的幸福から考えると難しい部分もあるのではないかと思っています。たとえば食で考えると、料亭で1月に出てくる、初もののたけのこは美味しい。二束三文で取引きされていたたけのこに、タイムスタンプというデータをつけるだけで、最初に出てきた2~3割には10倍以上の値がつく。同じようにトマトでも、肉料理に合うトマト、サラダに合うトマト、スープに合うトマトと、出口のタグでデータをつけることによって、価値が引き上げられる可能性があると思います。データを使って、創造性で価値を高め、一元的な合理性の価値軸ではない、多元的な価値軸をつくり、市場に新しい豊かさをもたらすことができるのではないか、ここに日本の新たなチャンスがあると思います。
 
安田:GDPの7~8割がリアルセクター、対面型を中心としたサービス業が占めています。最後に顧客と接しているところは、一番カスタマイゼーションができます。GAFAがビックデータを取っても、参入は難しい。GDPの大半を占めるリアルセクターで、AWSなどを使い倒しながら、質の高いデータを取り、創造性を発揮しながら仮説を立て、検証を繰り返し、付加価値をさらに高めたサービスを提供していく。結果うまく行くビジネスモデルが残り、それが日本の生産性を高めていくのではないかと思います。
 
 
 
後半は4人のパティシパントの方々(吉岡さん、蔵下さん、黒田さん、今井さん)にご参加いただき、
さらに考えを深めていきました。
 
 

データのわかりやすさと多様性は共存できるのか?

 
吉岡:私も、人々がいままで価値を感じていなかった部分に新しい価値を見出すことがクリエイティビティと思っていました。データで貨幣以外の価値が見えてくるというのは、その通りだなと。ただデータで分かりやすくすることと、多様な価値解釈はどう共存できるかが気になります。
 
宮田:中国の信用スコアが両面持っています。もともと信用はクレジットカードや運転免許についていましたが、中国ではあらゆるものを信用に還元しています。電気自動車や自転車で通ったり、休暇中に実家に帰ったり、ゴミを分別したらポイントアップする加点方式を組み合わせています。子どもの進学先にまで及んでいて、お金を持っていても行けないけれど、信用スコアを持っている人は行けるなど、お金の軸を超えるところに来ています。課題は、その信用を誰がコントロールしているのか分からない。そこに、一元的な支配であったり、超スコア化社会であったり、ある一部の集団の支配になるのではないかという恐怖もあります。そこにはふたつ学びがあり、お金以外の評価軸がついに現れた、そして国単位で共有した。歴史から見てもすごいことだと思います。さらに、透明性や、民主的なものをどう共存させる工夫が必要です。
私がいま鎌倉などと取り組んでいるのは、信用や貢献を多元的評価軸にしようと。例えば、子どもたちにサッカーを教えているおじちゃんたちの貢献ポイントを換金するのではなく、Jリーグ選手と交流戦するなど、彼らが価値を感じるものと換えていく。信用や貢献は人それぞれなので、様々な価値と交換しながら、多元軸の中で回して、共に社会を創っていけたらと思っています。なかなか難しいのですが。コペンハーゲンのSDGsや、バルセロナのシビックプライドなどが始まっているので、希望は見えてきていると思います。
 
安田多様なスコア換算がありつつ、それをまとめて一次元評価「しない」ことが特に大切だと思います。教育や子育てで考えてみましょう。これまで数値で評価されていなかった、人の話を最後まできちんと聞けるとか、友達がけんかしているときに仲裁ができるとかを、大人がきちんと褒める。褒められることで、子ども達は自分の特性に気づけます。色々な評価軸を設けると、お互いに適材適所が分かってくる。子どもの頃から、自分の創造性はこういう分野で発揮できると自分で気づいていくことが大切だと思っています。

 

New Normal は地方創生のチャンス?

 
蔵下:New Normalでの地方創生が気になります。テレワークで人々は都市から地方へ分散していくのかのではないか。これまで地方創生は観光文脈が多かったのですが、新型コロナで他にもチャンスが有るのではと思っています。
 
安田:東京とそれ以外の地方都市は圧倒的にクオリティオブライフが違うと思います。ではなぜ人が東京に住むのかというと、仕事があるというのが大きい理由です。職住近接が難しい、家賃が高い、通勤ラッシュなどがありますが、テレワークで少し解消されるので、東京は少し住みやすい都市になるかもしれません。東京都の人口が1400万人を突破しましたが、まだ続くかもしれない。いまの段階では分散するかの判断は難しいです。
新型コロナで地方には、2つプラスがあったと思います。1つは緊急事態宣言で各自治体が独自基準で動き、政治的に地方自治の分権化が進むきっかけになりました。人々は自分がどこに住んでいるか意識し、地方の首長は思い切ったことができるという成功体験につながったのではとも思います。2つ目は、アイデアを地方にもたらすきっかけになり得る可能性が出てきたことです。オンライン会議システムは最先端のデジタルコミュニケーションツールですが、おじちゃんおばちゃんも使えました。地方でお店のホームページを初めてつくりたい、クラウドファンディングを始めたい人がいるときに、都市に住んでいるアイデアやノウハウを持っている若い人が手助けしているという事例を聞きます。地方のニーズと都市部のアイデア、ノウハウがつながった瞬間です。商店街にひとつでもそのようにデジタルトランスフォーメーションできた店があると、ロールモデルになって、他のお店や街を変えていく。こういったプチ・デジタルトランスフォーメーションが起こり始めるのではと期待しています。
 
 

セレンディピティがクリエイティビティを高める?

 
黒田:人と人とのリアルな接点がどんどん少なくなっていくなかで、リアルなセレンディピティな出会いが大切だと思います。セレンディピティな出会いを増やすことは、経済のクリエイティビティの総量を上げると思っています。地方創生の話でいうと、散歩したくなる街っていい街だと思います。散歩のなかで自分が予期していない出会いに出会えたらすごく面白いなと。
 
安田:地元で心地よく過ごせるかというのは今後暮らす上での大切なポイントになると思います。新型コロナで普段歩き回らない地元の商店街で買い物をして、地元の豊かな経済圏に気づいた人は多いはずです。そうした人たちは住み続け、逆になんの特色もない街と気づいた人は住む場所を変えようかなと思われたのではないでしょうか。
出会いでいうと、個人的には、オンラインとオフラインの出会いが同時にできる、溶け合っている場に興味があります。VRなどを使い、オンラインの参加者もリアルの場を歩き回り、交流できる。そういうプラットフォームができると、新しい偶然の出会いや人脈を築けるきっかけになるのではないでしょうか。
 
宮田:セレンディピティをどうデザインするか、すごく大事ですね。自分が楽しいと思うもの、価値を感じるもので、偶然の接点をつくれるような仕掛けが暮らしのなかにあると面白いですね。教育にも繋がるかもしれません。異なる集団のなかで一緒に学び、創り、競争する。共有材としてのデータというのは一緒に作り使うことで、さらに豊かさを手に入れられます。同一集団だと、平均点は高いのですが、いいアイデアは生まれない。異質性のある集団ほど、0点もありますが100点も出てきます。新しい価値を創造することが、経済や社会において大事だとすると、セレンディピティを取り入れながら、いかにアクティビティを行っていくかということを考えてくことが大切です。
 
 

ニューエコノミーでニューカンパニーは生まれるのか?

 
今井:ニューエコノミーで、ニューカンパニーは生まれると思いますか?DXなどではなく、資本主義や市場を根本から変えるような新しい会社です。新型コロナで、自分の自由や幸せはなにか改めて問い直したときに、会社の成長と個人の幸せがトレードオフされているのではと思い。両者の幸せが共存できる会社の在り方を考えています。
 
宮田:いままさに働く体験そのものを変えていくタイミングです。人生の大半を会社の利益に捧げるフェーズから、自分が社会にどう貢献するがまずあり、会社を手段と見るフェーズに変わりつつあります。自分の生き方や社会貢献という価値軸で、一つの企業だけではなく副業などもしながら、働き方をデザインしていくということがこれから大切になります。テックジャイアントたちはSocial Goodだと言う。そうしないと、いい人材は来ないし、競争に勝てないと分かっています。日本には、人材の強みや職人気質、繊細で丁寧に価値をつくってきた人たちがいます。多様な価値をつむぎ取って、社会のなかで実現していける土壌があると思います。
 
安田すでにニューカンパニーは存在していると思います。旧来的な組織、いわゆる株式会社がカンパニーだという先入観があるだけです。データによって、クリエイティビティでどれだけ社会貢献しているかの可視化が進むほど、お金とは違う軸での組織の人気が高まると思います。過度なお金への一極集中ではなく、人々のやりがいやチャレンジ精神を活かしていく仕組み、組織をつくれるかが大切です。
 
宮田:ニューカンパニー、ニューコミュニティー、ニューネットワークで、新しい社会システムにつなげていくことがひとつの目標です。それは一人でつくるものではなくて、皆さんと一緒につくるもので、ポスト資本主義というよりは資本主義のネクストステップみたいなところにつながっていくといいと思います。
 

これから人は何に心を動かすのか?

 
安田利他性や社会性だと思います。若い方は特に、社会の役に立ちたい、自分しかできないことをやりたいという欲求が強いと思います。NPOに参加したり、起業したりして、世の中を変えたいと思っている。そういうモチベーションを持った新しい世代が生まれてきているので、旧来型の資本主義とは違うものさしや仕組みを駆動していくと思います。彼らのモチベーションをくみ取れる組織や仕組みであれば、どんどん新しいアイデアが生まれ、イノベーションが起き、ダイナミックな社会が実現できると思います。
 
宮田:同感です。これからは、自分が生きる上で何が大切か、積極的に生きることを響き合わせながら社会をつくる「human co-being」で生きていくことが、まさに始まるのではないかと思います。世界中で、新しい経済だけではなくて、社会を見出そうとしている時期だと思います。
 
安田:経済学の父と言われるアダム・スミス。アダム・スミスは2冊本を出しているのですが、有名な『国富論』では市場の需要と供給を体系立てて分析し、市場での繋がりを表現しました。もう1冊の『道徳感情論』では、共感という感情面での繋がりを強調しています。今日の議論を振り返ると、国富論的なつながりからスタートして、最後に共感に戻ってきている。アダム・スミスの手のひらで踊らされた2時間だったのかもしれません。
 
宮田:先人が打ち込んだ楔を、我々がどう受けて、次にどう響かせるか、大事な局面ですね。
 

最後にいま一度、CREATIVITYとは?

 
安田:アメリカの広告屋だったヤングさんが、ベストセラー本『アイデアのつくり方』の中で、アイデアというのはまず既存のアイデアとアイデアのつながり、新しい結びつきだと言っていました。シュンペーターの「新結合」に近いですね。ものごとを関係づける能力、リレーションを見つけ出す能力が決定的に重要だと。彼は、その能力は先天的なものではなく、後天的に身につけることができると言い、社会科学などの方法論を学ぶことをすすめています。関係性やアナロジーを見つけ出せる人は仮説設定がうまく、最終的にものになるアイデアを生み出しやすいのかもしれません。まずは、一つ専門性を極めて、一見すると違うものごとの関係性を見つける視点を養ってみてはどうでしょうか。
 
宮田:想像力が豊かだっていうときに、英語では「リソースする」言います。ひとつの井戸を持っているだけだと枯れてしまう、多様にはならない。まずは一個をしっかり見て、社会学や経済学、あるいは心理学や法学などを学ぶと、他の分野がどういうふうに世界を見ていくかということがわかるようになってくる。想像力の源をたくさん持つことで、様々な想像力がつながって新しいものが創造される。全部自分一人で抱えている必要はなく、誰と響き合いながら、ネットワークのなかでクリエイティビティを発揮して形にしていく。昔はデータも、つながる力もなかったので、個人から湧いてくるというのがひとつのクリエイティビティでしたが、これからはネットワークの多様性の中から、みんなと一緒に生み出していくことがクリエイティビティではないでしょうか