2022.10.12

創造性ゼミ 2022

【創造性ゼミ2022を終えて】創造性特区をつくろう〜 役所から地域の創造性をブーストしよう篇

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

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「創造性」を個人任せにせず、行政や社会の仕組みから底上げする


個人にフォーカスした「創造性」の話ばかりしていてもラチがあかない



──創造性特区ゼミは、「社会全体の創造性を最大化するための仕組み・手法を見つけ、実装する」ことを目指しているとあります。社会全体の創造性を最大化する、とはどういうことでしょうか?
 
まず、僕たちのゼミでは、創造性を「これまでになかったものやことを見出す力」と定義しています。これまでになかった、と言うとつい人類史上初めての発見のようなものを連想してしまうかもしれませんが、実際には「誰にとって」これまでになかったかを考えることで、創造性と呼べるものの範囲はもっと広がります。たとえば僕たちがいま初めてお話ししていることも、「個人にとって」の単位で見ればこれまでになかったことですし、これが「組織にとって」「地域社会にとって」と範囲が広がっていくことで、やがて「人類にとって」に繋がるわけです。組織や社会というのは個人の集合体ですから、社会全体を変えるようなものすごい創造性を発揮するためには、日常的なレベルでの小さな創造性の発揮が必要になってくるはずです。
 
創造性というテーマについて考えるとなると、どうやって個性的な人を育てるか、というような個人にフォーカスした課題にばかり話が行きがちなのですが、実際にはそれを考えるためには社会の仕組み自体を変えていかなきゃいけないし、さまざまな範囲の創造性を発揮するための環境・文化をつくらなきゃいけない。創造性というものを個人任せにせず、社会の創造性を底上げする=中央値をあげるような形に行政の仕組みや社会のルールを整えていくことができないか、というのが今回のゼミが目標としたところです。
 
──実際のゼミは、どのように進めていったのでしょうか?
 
実は今回のゼミは第2期という位置づけなんです。1期目は一昨年から昨年にかけて、「クリエイティブ産業ゼミ」という名前で、個人、組織そして社会がどうすれば創造性を発揮し、それをマネジメントできるのかをディスカッションし、仮説をつくる全10回のワークショップをおこないました。
そこでの議論と仮説を踏まえ、社会にもっとも効率よく影響を与えられるのは、意思決定やルール変更の仕組みが整備されていて、なおかついろいろな人たちによって構成されている基礎自治体、つまり市区町村じゃないかと考えました。じゃあその中心である役所に入り込んで、そこの施策を扱ってみるのはどうだろう、ということで進めていったのが今回の第2期です。


──では今回のゼミ内では、実際の自治体の施策を扱ったのでしょうか。
 
はい。UoCは千葉県君津市さんと包括連携協定という、創造性のマネジメントに関する研究において協力し合う協定を結んでいるので、君津市の「市民が主役のまちづくり事業支援制度」という制度を創造性の観点から見直すことをゼミ全体の課題としました。ゼミの中で4つのグループに分かれて話し合い、制度にまつわる現状の課題をまとめ、新しいアイデアを市長や市職員のみなさんに提案するというところまでやりました。


「一つひとつの施策を見直していても意味がない」というリアルな課題が浮き彫りに

 
──アイデアの提案は、どういった形でおこなわれたのでしょうか?
 
創造性特区ゼミはさまざまな場所に住んでいる人に参加してほしいという思いから、全編オンライン参加OKにしました。結果的にメンバーの半数ほどが関東圏外の人たちだったこともあり、君津市に直接足を運んで提案するのが難しかったため、ゼミ生をzoomでつなぎつつ、事前録画した10分間のプレゼン動画を市長や20人以上の職員のみなさんに見ていただいてフィードバックをもらうという形になりました。
 
──なるほど。プレゼンの内容にはどのようなものがありましたか?
 
全員自治体職員の人たちで構成されていたあるグループは、役所内あるあるの縦割りという問題を指摘し、それを解決するために、「きみつ部」という、担当課内に外部人材をいれたチームをつくることを提案していました。「きみつ部」は市役所の担当職員と市内の小中高生、大学生たちによって構成されるチームで、市役所の職員以外の目線を取り入れることによって、そもそもどうなんだっけ?という議論を活発化させ、部下から上司への壁打ち的なコミュニケーションを促したり、市民団体の本音を引き出せるような仕組みをつくれないか、という内容でした。
 
また他のグループでは、「市民が主役のまちづくり事業支援制度」が本質的に目指しているものは、事業支援ではなく、「主役」になるような市民を増やすこと、つまり自分らしく主体的に生きている人を育てることだという点に着目した提案をしていました。具体的には、現状の市民団体は新規加入者の少なさを課題としているけれど、実際には「この団体に入りませんか」という勧誘をいきなりされてもなかなか入る気にならない人がほとんどですよね。それを踏まえて、1回限りの参加OKの活動を増やすなど、市民の「関わり代」を増やすための提言を複数おこなっていました。


それぞれのグループの提案はユニークではあったと思います。ただ、頂いたフィードバックを踏まえると、社会全体の創造性を底上げするという視点では、施策の改善をひとつひとつ僕らが考えていてはラチがあかない、というリアルでそもそもな課題も浮き彫りになりました。
 
──それはなぜでしょうか?
 
たとえば、最初のグループのプレゼンにあったような「上司と部下の壁打ちを活性化させる」ことを提案しても、市役所内ではなかなかそれは機能しないのではないかという意見がありました。その職員の方の視点では、上司はあくまで決まったことを部下にやってほしいと思っているもので、そこから先は部下の仕事であって、それの壁打ちを求められてもをされても困るのではないかとのことでした。まさしく、役所内の文化に関わることです。
 
これはゼミ生たちの中で自治体職員をしている人たちも指摘していたことなんですが、多くの市役所にとってチームプレーの文化が非常に薄いということがそもそもの問題なのではないか、というのが見えてきたんです。だからこそ、チームプレーを推進させるための仕組み、つまりルールやツールを確立させ、それが実践できるようなスキルをつけ、それによって文化を醸成していくことを次に考えるべきだと思っています。
 


自分の住む街や行政へ向ける目線が変わった

 
──いまのお話にもあったように、ゼミ生には自治体職員の方が多かったのでしょうか?
 
全体の参加者のうち1/4が自治体職員の方でした。やっぱりいま言ったようなチームプレーの少なさに問題意識を持ち、自治体同士の外の繋がりをつくりたいという考えで参加してくれた人もいましたし、自治体職員以外では、まちづくりに関心がある学生の方や、行政に関わる仕事をやっている人、・住んでいるところや故郷に関する活動をやっている人まで、年齢・性別・居住地・職業さまざまでした。
 
──全10回のゼミを終え、まなぶさんの目から見て、ゼミ生にはどのような変化がありましたか。
 
自治体職員の方は、同じような問題意識を持った人たちにどうしても出会いづらいという課題を抱えていたようだったので、今回のゼミへの参加で、オンラインでミーティングや壁打ちができる仲間に出会えたことが大きかったようです。
 
また、地元で子ども食堂をやっているあるゼミ生は、市役所の人と話すたびに、言葉の違いやディフェンシブな態度に悩まされていて、彼らとどうやったら渡り合えるのかを考えてゼミに入ってきたらしいんですね。でもゼミへの参加を経て、別に渡り合う必要なんてない、一緒にやれることをやればいいんだと姿勢が変わったと話していました。なんとなく敵のように思えていた人たちは別に敵じゃないし、同じ目的を持った仲間なんだと思えた、と。
 
自分の住む街への見方が変わったと言っていたゼミ生もいましたね。「まちづくり」という言葉だけだと地元の市民団体が勝手に進めているものというイメージがあったけれど、そこに行政がいて自分たち市民がいる、ということに改めて気づくきっかけになったと話してくれたのが印象的です。


取材・文:生湯葉シホ



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