2022.7.15

創造性ゼミ 2022

【連載】カーボンニュートラルと創造性 ~脱炭素による経済発展を自分の仕事にしてみよう~ (2022創造性ゼミ第8回)

2050年カーボンニュートラル宣言。脱炭素の挑戦をブレーキではなく成長のエネルギーに変えることでこの目標を達成できないか?というのが産業経済社会が抱える最大の課題です。

この課題に対して経済、テック、哲学、文化…さまざまな世界の第一線で活躍するチャレンジャーをゲストに迎え、その刺激を浴びながら議論と創発を行い、連携して複数のプロジェクトを立ち上げることを目指す「カーボンニュートラルと創造性ゼミ」での講義と議論の模様を、毎週金曜追加更新の形で配信動画と参加者によるレポート記事としてお届けしていきます。


田村 裕俊

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レポート:こばやしゆうき


「カーボンニュートラルと創造性」ゼミ8回目の講義は映画「マイクロプラスチックストーリー」がテーマ。この映画は大手映画館での一斉上映や動画配信サービスでは配信せず、自主上映と口コミで広がり、世界44カ国の映画祭に選定、8つの賞を受賞、流行りとは違う波紋を起こしている話題の映画。

私が初めてこの映画を知ったのも、友人からの口コミだった。環境関連の海外映画は過去にも観たことがあり、そのようなものをイメージした。でも友人によると映画上映の後に座談会があり、それに映画の監督も参加するという。ニューヨークの小学校が舞台の映画、「監督って日本語話せるの!?」と素朴に疑問に思ったら、なんと監督は日本人の佐竹敦子さんという方。この映画、普通の映画じゃなさそう。なんだか気になる!この佐竹敦子さんとはどんな方で、なぜニューヨークで映画を撮って、座談会まで参加しているのだろう??そんなことを思っていたら、ゼミの講座で佐竹監督にお会いできるチャンスを貰った。

今回は佐竹監督よりゼミ参加者とじっくり議論したいと提案いただき、ゼミ参加者は事前に映画を視聴し、当日は佐竹監督が考える「変革のレシピ」についてじっくりと議論の時間をいただいた。



カフェテリアレンジャー誕生!1日40袋のゴミが4袋に!

佐竹さんは日本で生まれ、高校・大学時代に自主映画を製作、ニューヨークに住みたい!という想いから移住し、撮影コーディネートの仕事をしていたそう。

ある日、息子さんの学校のカフェテリアに足を踏み入れたことが転機になる。日本の私たちからすると「カフェテリア」とは、さぞオシャレで楽しい場所なのだろうとイメージするが、実際にはうるさい・汚いのカオス!床には食べ物・牛乳が散らばっているのに、誰も気にしない、掃除もしないことに佐竹さんは驚き、「日本人とか何人とか関係なくダメでしょーーー!」と思い、即校長室へ直談判。自分で掃除をさせて貰うことの許可を得た。



▲カフェテリア、これでもキレイな方なんだそう・・・

こうして翌日からカフェテリアの掃除が始まった。すると2年生の男の子が「Can I help you?」と声をかけてきた。その日から彼は喜んで掃除を手伝ってくれるようになった。すると今度は「彼だけ掃除をするのはずるい!不公平だ!」と言って、掃除の応募者が続出したのだそう!こうしてカフェテリアレンジャーと呼ばれる子供お掃除隊が結成された。


▲カフェテリアレンジャー。掃除をしたことがない子がほとんど。ほうきの使い方から教えた。

佐竹さんが掃除を始めた当初1日40袋あったゴミの量が、カフェテリアレンジャーの働きでなんと4袋まで減るという成果を出した!それだけでも大きな一歩だが、そのBefore/After写真がバズり、環境保護庁からウェビナーの依頼が来るなどの大きな反響へ繋がったのだそう!


▲全校で毎日40袋出ていたゴミが4袋にまで減少!



「見っ放しの5万人より、アクションしてくれる1000人にこの映画を見て欲しい。」

時を同じくして、発泡スチロールの回収などを始めていたNPO団体カフェテリア・カルチャーのデビーリー・コーヘンさんに出会い、一緒に活動を始める。そして自分たちの活動を撮影、Youtube投稿も始めた。

カフェテリア・カルチャーのプラスチック削減プログラムの活動の中で出会ったのが、ニューヨーク・ブルックリンにある第15小学校。職員の大人たちが心の芯から子供たちを想う暖かさ、オープンな子供たちの空気が他とは全く違うと感じた。「これは10分のYoutubeでは伝えきれない、ドキュメンタリー映画にして、世の中の人に知ってもらいたい!」こうして撮影したビデオを基に長編映画を作ることを決意した。

「どうやってあの学校を見つけたのですか?と聞かれますが、映画を作りたくて学校を探したのではなく、その逆。私たちカフェテリア・カルチャーの活動をドキュメントしたものが、あの映画になった。」
一般的な映画はたくさんの人に観て貰い、売上をあげることを目的としている。でもこの映画の目的はそれとは全く異なる。
「見っ放しの5万人より、アクションしてくれる1000人にこの映画を見て欲しい。」と佐竹監督。

一般的なドキュメンタリー映画は第三者に密着しているが、その題材が自分たちの活動であること、映画の目的が売上ではなく、自分たちの活動のゴールへ向かっていること、それが私が「この映画、他の映画とは違う」と感じた理由だと分かった。

こうして15小の子供たちが4年生から2年をかけてプラスチック問題に向き合う様子を追ったドキュメンタリー映画「マイクロプラスチックストーリー」は2019年に公開された。



子供たちのアクションで、ニューヨークでは発泡スチロール容器禁止に!

子供たちは自分の足で、海や街中のゴミ調査、洋服から出るマイクロプラスチックの実験などを行った。マイクロプラスチックとは5mm以下の小さなプラスチックのこと。子供たちはこの調査でマイクロプラスチックが海を汚していることや海の仲間を殺してしまっていること、そして化石燃料から作られているプラスチックが地球温暖化に繋がっていることを学ぶ。

調査のやり方はシンプルなものばかりだけれども、参考書で知るのではない、自分たちの身の回りで集めたデータはリアルで、だからこそ私たち自身の問題なのだと教えてくれる強さがある。そして子供たちはその調査で得た学びから、次はどうすればいいのかを自ら考え、アクションを起こす。



子供たちは手書きのポスターでポイ捨てをやめるよう訴え、ニューヨーク市議会 環境保全委員会ではプラスチック問題への対策を主張、発泡スチロール廃止を求める集会も実施した。同時に自分たちの日常がプラスチック問題の原因の一つであることにも気が付き、15小で「プラスチックゼロ昼食の日」を企画した。

子供たちのこれらの活動がポイ捨て40%削減!ニューヨーク市全体で発泡スチロール容器禁止!映画公開後にはニューヨーク全市の学校で「プラスチックゼロ昼食の日」が実行されるという大きな大きな変革へと繋がった。


▲ニューヨーク全市で行われたプラスチックゼロ昼食の日


「声をあげたら聞いてくれる人がいることを知って欲しい」

佐竹監督は言う「明日何が起こるかわからない複雑な社会を生きていかなければいけない子供たち。これからの世の中を生きていくには、自分たちで情報を集め、話し合い、声をあげて、社会の仕組みを変えていくというスキルが必要。
声をあげたら聞いてくれる人がいるということを、子供たちに知って欲しかった。」



この映画は、子供だけでなく、大人へも自分の在り方を見つめ直すきっかけをくれる。大人になると様々な現実を知り、分かっていてもアクションに移すハードルは高くなる。私がこの映画で一番心を動かされたのは15小の子供たちが感じたことを素直に口にし、それをそのまま行動に変える純粋なエネルギー。

そしてその強い想いは人の心を、行動を、そして社会を変えた。学校指導員として子供たちに寄り添って来たナイトさんは子供たちに言った。
「あなたたちには社会を変えるパワーがあるのよ」
投票率の低い国・日本、自分たちが何をしても社会は変わらないと思っている私たちに、15小の子供たちが教えてくれることは大きい。


同じ想いを持つ仲間を見つけることから「変革」は始まる

私たちはなぜ素直に行動できないのだろう?どうしたらそれを変えられるのだろう?
佐竹さんは「まずこの話を一緒にできる人を探してください」と言う。佐竹監督もデビーリー・コーヘンさんと出会い、二人の力=power of twoが変革へと繋がった。

興味がある人がこの映画の上映会、座談会を開き、そこで仲間を見つけて、互いを巻き込み、変革へと繋げていって欲しいと佐竹監督。




変革のレシピ

これまでに様々な変革を起こしてきた佐竹監督の「変革のレシピ」を教えていただいた。自分が所属する組織で変革を起こすヒント!

①小さい単位で始めてみること
→まずは会社の1部署でも、学校の1クラスからでいい。
②Before/Afterのデータと写真を押さえておくこと
③小さい単位で出た結果を基に、それが広がった時の推定値を出すこと
→会社の1部署、学校の1クラスの結果を基に、全社、全校に広まればどういう実績に繋がるのか?の推定値を出す。

これを準備し、交渉へ。決定権を下す人が「成功の形を想像できるか?」がカギ。想像させるには「推定値」と「ビジュアル」が必要。これで佐竹監督は実績をあげて来たのだという。


まずは自分が楽しむこと!

後半のゼミ生や映画のアンバサダーズとのディスカッションの中で度々出て来たのが「こういう話は友達にしにくい」「なかなか仲間が見つからない」と言うモヤモヤ。佐竹監督は「自分が楽しんでやっていれば、話したくなる!まずは自分が楽しむこと。」「時間はかかっても必ず仲間は見つかるから諦めないで。うまく進まないこともあるけど、そこにフォーカスせず続けていくことが大切」とひとりひとりの言葉に丁寧に寄り添い、アドバイス、励ましの言葉をくれた。この座談会を世界中でやっている佐竹監督。あまりにパワフル!この原動力はどこから来るのか。

「私を動かしているのは子供たち。15小の子供たちは家庭環境も複雑で、4割の子は支援が必要。そんな彼らに声をあげれば聞いてくれる人がいると知って欲しい。その気持ちが私を動かしている。」

行動は起こすのではなく、強い想いに突き動かされるものなのかも知れない。自分には何もできないと思うストッパーを外せば、感じたことをそのまま行動にできるのかも。

このゼミの日、佐竹監督のお話を聞き、ホットな気持ちのまま偶然隣の席だった映画のアンバサダーを務めるきなりちゃんのご家族と話したことがきっかけで、8月11日(祝・木)に「マイクロプラスチックストーリー」の上映会をやることになった。同じ想いを持つ仲間は実はとても近くにいた!映画の座談会はその仲間を見つけるのにとてもいいチャンス。まずはお近くの上映会・座談会にぜひ参加してみてください!

映画「マイクロプラスチックストーリー」上映会&ディスカッション
■日時:8月11日(祝・木)14時〜
■場所:せたがや がやがや館(東京都世田谷区池尻2‒3‒11 3F・4F)
■交通アクセス:東急田園都市線「池尻大橋」駅から徒歩7分
バス停「池尻」「三宿」から徒歩6分 1Fに有料駐車場あり(全7台)
■詳細はこちら
https://peatix.com/event/3302648/view


■その他、全国の上映情報はこちら
https://www.microplasticstory.org/attend

Catalyst
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佐竹 敦子
監督・プロデューサー・環境活動家・ドキュメンタリー映像作家

ニューヨークを拠点とするNPO団体カフェテリアカルチャーにてメディアディレクターをつとめながら、合衆国環境保護庁やニューヨーク市教育委員会と密接に活動中。低所得者層地域の小中学校に出向いて環境教育を行いながら、子供達や地域の方々を巻き込んで、プラスチック汚染問題、そして気候危機問題を啓発する映画やビデオの制作をしている。子供達が自分たちで声をあげ、問題解決に立ち向かえるチカラを育む環境教育の姿勢が映像作品にも反映されている。 環境活動家としてもカフェテリア・カルチャーをベースにニューヨーク市の発泡スチロール容器廃止やレジ袋課金など教え子たちと共に積極的に政策提言活動し、法案通過に貢献している。現在、プラスチック汚染の解決に向けたグローバル組織、Break Free From Plastic のコアメンバーとして、特に若者の活動支援を行っている。  共同監督した映画「マイクロプラスチック ・ストーリー 〜ぼくらが作る2050年」(原題:Microplastic Madness)はニューヨークの5年生たちがプラスチック汚染問題に立ち向かう2年間が希望に溢れたトーンで描かれており、世界の映画祭で8つの受賞を果たし、37カ国で上映されている。2021年制作の日本語吹替版は全国から子役声優を募集し、その子達をプラスチック削減アンバサダーに認定、今後もアンバサダー達をベースに日本でも活動を広げて行く予定。  主な作品に「School Lunch in Japan - It’s Not Just About Eating」(YouTubeで 2,700万回再生) また東京都制作の海ごみをテーマにした短編ムービー(2017)、そして海ゴミをテーマにした短編ドキュメンタリー「みんなの海だから」(2013) が8つの映画祭に入選、NY市国際映画祭での最優秀短編ドキュメンタリーを受賞した他、コスタリカ、インドの映画祭でも受賞を果たした。 ニューヨーク市マンハッタン在住。2児の母。日本大学芸術学部放送学科卒業

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