2022.9.27

創造性ゼミ 2022

【創造性ゼミ2022を終えて】細胞においしい 地球においしい|土と腸と火を巡るフィールドワーク

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

#universityofcreativity  #UoC  #創造性ゼミ 2022  #創造性  #土と腸と火  #ウェルビーイング  #火  #土  #腸  #地球  #細胞 


食を通じた体験で生きることのそもそもを考え直す
食を通じてウェルビーイングを探る


──「土と腸と火」で共通するのは食ということですが、なぜ食をテーマに?

「食べる」ということは人間にとっての暮らしのスタートです。狩りに行く人がいて、調理する人がいて分業がある。人は他人と共同体を組んで暮らしてきた歴史が食の現場に現れていて、そもそも動物と人間が最も違う点は火を使って料理をすることでもある。

食べることは生きること。今ウェルビーイング(※身体のみならず精神・社会面での健康)ということがよく言われていますが、都心に住む人だと「生きる=働いて稼ぐ」になってしまいがちです。食を通じて自分自身にとって生きることの根本と向き合ってもらうことを目的としています。


──現代の人がウェルビーイングを達成できてない実感はありますか?

私はふだん食を通じて体を健康にしていく東洋医学ベースの料理教室を開催していますが、不調を訴える人がすごく多いんです。聞いてみると、生活するためにとにかく忙しくて、本来自分が求めているものと現状が違う人が多い。ストレスフルな状態で体調や精神を崩して社会を離脱するような構造が出来上がってしまっているのをすごく感じますね。

ここではそこに気づくきっかけを作る。自分の体が元気で精神もポジティブな状態であれば、仕事の効率も上がるし病気にもならない。何をやるにしても楽しくなる。そんなウェルビーイングというものが今本当に重要なんじゃないかと考えます。


当たり前を疑うだけでなく自分で考える




──創造性という意味ではどうでしょうか?

生活における当たり前を疑うこと。そこから自分で考えること。そのこと自体に創造性があると考えてます。

今はお腹が空いてお昼の時間になったから食べるというのが一般的ですよね。そしてスーパーで売られているものをそのまま買う。でもそこには想像も何もできない。ナス一つとっても土があって微生物がいてそこに根を生やしていろんな生き物たちが協力した上で作られているのに。そもそもどうやってできたものなのか、食べた後それがどうなるのか。「食べること=生きること」なのにそこに対して想像できないのが一つの課題です。

といっても教科書のように正解をただ伝えるだけでは想像力が生まれるわけではありません。フィールドワークという形で体感して自分で手に触れて仕組み自体を知ってもらうことで想像するきっかけを与えたい。

──当たり前を疑って、普段の生活に想像を創造するということですね。

「疑う」といっても今、あの成分がよくないとか否定する用法もありますよね。疑い続けると何を信じていいのかわからなくなる。自分は何を良しとするのかというところまで自分の力で考えきることをやってほしい。

先日行われた第3回では薪を割って木を拾って火をつけて料理をしました。そうすると家に帰ってIHなり電子レンジで作った時の感覚が変わってくる。いろんな料理法を知った上で、自分にとってのウェルビーイングな正解を想像してほしいですね。


生きることを見つめ直す視点の新鮮さを愉しむ



──ゼミではどんなことをされてどんな反応があったんですか? 腸の回というのは?

ぬか床作りですね。ぬか床はみんなでそれぞれ仕込んだんです。後日みんなで食べ比べたんですけど、最初は同じ材料だったのに家庭に持ち帰るとその味が全然違ったものになっている。ぬか床も生きてるので、サボったり自分が体調が悪かったりすると反映されてくるし味もその人の味になるんです。

次第に「毎日かき混ぜなきゃ」とか「早く帰らなきゃ」とかぬか床を気にかけるようになります。すると「自分の住んでいるエリアの中に違う生き物がいる感覚」と参加者の方は言われてましたがそんな感覚があるんですよね。

土作りの回では生ごみから堆肥にする過程をやってもらいました。実は植物にとっての土の働きは人間にとっての腸の働きとほとんど同じなんです。土の違いで野菜の味の濃さや色味が全然違う。健康な土から健康な野菜ができるし、健康な腸があれば、人間も健康でいられます。自分たちが何を食べて腸内細菌の生物たちとどうやって連携をとってくかがすごく大事なんですよね。

土の健康度や働きによって、野菜がこうなるんだとみなさん驚かれてました。そこからどう実践に移すかというよりはきっかけとなることだったり深い知識を届けることを目的とした回でした。


──火の回は薪を使っての調理ということでしたが?

人間が二足歩行になったのは火を使って食べ物の繊維を柔らかくすることができたからなんですよね。噛む負担を減らし首の裏の筋肉が退化して人は立てるようになり二足歩行できるようになった。普通の動物は草をずっと噛んでますよね。

でも今はIHや電子レンジを使い、加工食品や工業的なものを食べている。そんな当たり前の状況を疑うことをしたいんです。

バーベキューといっても薪からやったことはなかったという方は多かったので、その難しさを感じてもらったり。木の組み方とかもあるんですよね。ご飯を炊く、お湯を沸かす、大変な面もありますけど反応としてはみんな面白かったって感じでしたね。基本的には「おいしい!」という感想がすごく多かったです。



腸を通じて、地球の連携を感じる


──腸は世間でも話題ですが、ここではどのようなお話をされたんでしょうか?

人間は消化によって必要なエネルギーや水分を得てますが、その消化は腸内の微生物が行ってくれてます。どういう微生物が腸内に住み着くかは私たちが食べたものによって決まり、腸の中では私達と腸内細菌が連携をとって生かし合ってるイメージですね。

一方、植物は光合成によって必要なエネルギーや有機物を作り出すんですけど、その一部を土にいる菌に根から出して渡すんですよね。自分自身が作れなかった栄養素をその微生物が作ってくれる。植物も消化器ではないけれど、土の中で同じように菌と連携して生きるような仕組みを持ってる。

──なるほど、人と腸、植物と土、は一番近い他者でもあるんですね。

そうですね。今の世の中がウェルビーイングから程遠い理由としては人間社会という仕組みの中でしかものを見ていないことがあります。植物も虫も動物も微生物も地球というものの中にいて、それぞれが連携してるから私たちは生きられてるんだという視点が必要。それを見える化するには「食」は有効です。


食べることは生きること、生きる視点が変わる



──このゼミ全体を通じての参加者の変化はありましたか?

このゼミのフィードバック会はまだ行われてないんですが、普段からこうした活動を通じて来る反応としては食べ物の買い方や見方が変わったというのは多いですね。スーパーで野菜を買う時もどういう風に作られたのかなとか。今まで値段だけ見てたのが、ものそのものを見るというように、ものの見方が変わったのではないかと思います。




取材・文:大北英人



Sayokoさんがプログラムディレクターを務めたゼミはこちら→
細胞においしい 地球においしい|土と腸と火を巡るフィールドワーク