2022.10.18

創造性ゼミ 2022

【創造性ゼミ2022を終えて】地球市民 x 創造性~SDGs の基本を学び、命や尊厳を中心にしたプロジェクトを創造する~

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

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 「自分自身でつくり出す」地球市民の創造性


消費者ではなく、市民の視点を


ー「地球市民」をゼミのテーマに据えたのはなぜでしょう?
 
SDGsの理念をまとめた「2030アジェンダ」にも「グローバルシティズンシップ」という言葉があり、私はそれを「地球市民」と訳して使っています。持続可能でない世界を変革するには、まず自己の変革からはじめることが重要だと思っています。 その主体としての「地球市民」を意識して行動できる人を増やしていきたいことから「地球市民」のテーマにしました。
 
みなさんいろいろな肩書きを持っていると思うんです。 「お父さん」「お母さん」であったり、「〇〇社の社員」だったり。
そこにプラスして「地球人としての私」という主語を持つことで、広いアンテナや視点を持つことができるのだと思っています。    
変化が起きやすいVUCA時代と言われる現代は、特に世界でどのようなことが起きていて、どう自分や地域、日本が関わっているかを理解することが必要で、そのためには地球的視点・意識を持つことが重要だと考えています。
 
そして、消費者ではなく「市民」である    ということも大事だと思っています。「消費者」は、大量生産・大量消費という旧来型の経済システムとともに使われてきた言葉だと思うんです。その言葉では、やはりものを消費するというシステムから抜け出せなかったり、どうしても受け身な態度になってしまうのではないかと思います。
 
それに対して、「能動的に自分自身で選び取る・つくり出す」のが「市民=シティズンシップ」です。自分の身の回りのことだけじゃなく、仕事や地域などを総合的にデザインしてつくっていく態度や姿勢が必要で、これは「創造性」というUoC全体のテーマとも合致するところだと思っています。


 
ー「国際的な問題を自分ごととして捉えて、主体的に行動する」ということでしょうか。
 
国際社会というよりも、そこに含まれていない自然生態系や宇宙のことも考えられるような大きな視点なのだと思っています    。    
 
ー「主体的に行動する個人」としての「市民」という概念が、そもそも日本には根付いていないように思うんですが、いかがでしょうか?
 
    グローバルではシティズンシップが非常に重要視されてきていて、例えばバルセロナやコペンハーゲン、アムステルダムなどでは、市民主導の街づくりになってきています。    それに対して日本は    「地域や組織を自分たちでつくっていくんだ」という主権者教育も足りていないということもあり    、まだ根付いてない気はしますね    
 
ー「先生の言うことを聞いておけばいいんだよ」という感じもまだありますもんね。
 
そうですね。もしかしたら戦後教育の名残もあるかもしれません。「エシカル消費」という概念もシェアされはじめましたが、能動的に選ぶだけではなく、さらに自らつくり出す・参加するという考え方こそ大事なのかなと思います。
 
ー主権者として能動的に行動することが創造性に繋がっていくわけですね。
 
政府も「新しい資本主義」を掲げていますが、経済のかたちを「大量生産・大量消費・大量廃棄」から自分たちにとって最適なものにつくり変えていく必要を感じていて、そのためにもグローバルシティズンシップに根ざしたクリエイティビティが重要だと考えています    


    
 

既存の社会から問題点を発見し、リデザインする


ー「ジェンダーバイアス」と「情報リテラシー」がテーマの回には、ゲストをお招きしたんですよね。
 
そうなんです。ジェンダーバイアスの回では、社会にはどのようなバイアスがあり、何が私たちに影響しているかをみなさんと考えました。「男とは / 女とはこういうもの」というような偏った思い込みを「ジェンダーバイアス」と呼ぶんですが、         ほとんどの人がバイアスを持っていると言えます。              講師の方のお話で、    誰かを責めるのではなく認め合うこと    、許し合う前提の上で対話を重ねることが大事、というのは特に印象的でした。              
 
情報リテラシーの回では 、みなさんと「フィルターバブル」について話しました。現代はアルゴリズムに基づいて情報が入ってきます。アルゴリズムによって偏った情報しか入ってこない状態を「フィルターバブル」というんですが、情報に対しても能動的な態度をとることが一層大事になってきていて、どこからどのように情報を得るかということを自らにデザインして、責任を持たないといけない時代になっているんだと思います    
 
ージェンダーバイアスにせよフィルターバブルにせよ、「自分で決めている」と思っていても、規範や偏った情報源のせいで、実は「思い込まされている」というのは非常に現代的な問題ですね。
 
そうですね。こういった話を踏まえて、既存の社会デザインから「私たちがどう影響を受けているのか、何が問題なのか」を発見して、その問題点を生み出さない社会デザインを模索したのが今回のゼミでした。
 
例えば、「貧困のない経済のデザイン」や「誰一人取り残さない社会のデザイン」、「適正な情報やコミュニティのデザイン」などです。既存のもののどこが問題で、デザインし直すには何が必要なのか。ゼミ生それぞれのニーズをシェアして、それを基にビジョンを描いて、ビジョンからバックキャスティング(未来から今をデザインする手法)し、最終的に必要なプロジェクトをアウトプットするという流れで取り組みました 。






ワークでは、さまざまなアイディアが出る中で、人と人との繋がりの重要性やコミュニティ内で承認し合うことの重要性についての意見が多く出ました。それをどのような仕組みにしていくのかを考えて、社会ビジョンにしてもらいました。
 


普段とは違う思考で「幸せ」を再確認

 
ーワークショップを経て、ゼミ生のみなさんの意識はどのように変化しましたか?
 
これまで考えたことのないことを考えるので、ワークが終わった後頭がパンパンになっていた人もいました。
 
普段とは違う視点で周りの環境を見ていくことができるんじゃないかと思います。
 
ー社会人だったら生産性や業績を考える必要がありますけど、そういったこととは違う頭の使い方ですもんね。
 
そうですね。そういった生産性至上主義みたいなものが環境問題を悪化させている側面もあるなかで、生産性ではない心の豊かさやウェルビーイングを叶えるにはどうしたら良いのかというのもみなさんに向き合ってもらいました。「自分自身の幸せってなんだろう」というところを改めて考えるきっかけになったのではないかなと思います。         
 
ー「タワーマンションに住んで高級車に乗っているから幸せ」ということではなく、主体的に「自分の幸せ」を設定するという。
 
食をテーマにした回では「自分が何を、誰と、いつ、どうやって食べたいか」を一から考えてもらいました。食事は毎日するものですが、ちゃんと選び取れているかを改めて立ち止まって考える機会になったんじゃないかと思います。
 
個人それぞれの幸せがあって、それを叶えるために繋がりやコミュニティが必要になり、経済システムが必要になるという順番であるべきだと考えています 。それが今ではすべてではないにしろ経済を成り立たせるための社会や暮らしになってしまっている。
 
もちろん、社会や世界を豊かにするために持っているものをどんどん拡大させて増やしていく必要があった時代もありましたが、ある程度のインフラや仕組みが整った現在、日本は特に見直すタイミングにあるのかなと思います。
 
ー一度立ち止まってさまざまなバックボーンを持つ人と話せるこのゼミのような場は、とても重要ですよね。
 
そうですね。政治や都市計画も一部の権力がある人だけで議論するのではなく、今一度すべてのステークホルダーが主体的に考えていくことをやらないといけないのだと思っています。そうしないと当事者や現場が置き去りにされて、結果    人権侵害や環境破壊が起きてしまう。
 
SDGsの目標は、事前にオンラインで集めた世界中の何千万人もの意見が反映されているんです。いろいろな人々が参画して人類ビジョンをつくったという功績自体が、SDGsの最も重要なメッセージだと思います。
 
 

取材・文:張江浩司


松尾沙織さんがプログラムディレクターを務めたゼミはこちら→ 
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