2022.9.23

創造性ゼミ 2022

【レポート】創造性全史(2022創造性ゼミ第10回・最終回)

創造性ゼミ2022 『創造性全史』ゼミの最終回レポート!

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人類の歴史はそのまま創造性の歴史でもあります。わたしたちは様々なことに対してトキメキを覚えたり、ハラハラしたりしてきました。その結果が現在の文化や文明へとつながっています。そんな創造性の根本にある「感動」の連続を、歴史として自分なりに編纂してみよう。それがゼミ「創造性全史」のテーマです。UoCの掲げる根本的なテーマでもあるこの創造性に真正面から向き合い、ゼミ生たちが自分なりの方法で成果を発表した最終日の様子をレポートします。当日はUoCの星出祐輔が進行をリードしながら、文化人類学者、空想地図作家、舞台演出家をはじめ、多分野のゲストがゼミ生の発表に対してフィードバックを行い、議論を深めていきました。





歴史と言えば年表。しかし年表には「良いこと」だけではなく「悪いこと」も書かれています。あるゼミ生はそんな過去の歴史からを自分なりに分岐させて、過ちがプラスになったり、ユーモラスに展開するような「架空の現代史」を年表としてまとめました。例えば過去に悪用されることで悲劇を引き起こした1995年の地下鉄サリン事件などで話題になった猛毒剤が改良され、殺虫剤として利用され、ゴキブリとの全面戦争になったり、電気自動車のエコタイプの人工衛星バージョンが打ち上げられるなどの「あったかもしれない」歴史がそこには記されています。政治的出来事からインフラの話題まで、幅広い事象に目を向けながらまとめられたそれは、近年話題となっているスペキュラティブ・デザインの思考法にも似ており、そういった意味では教育プログラム化できないかというコメントがゲストからなされるなど、今後の展開方法まで含めたディスカッションが行われました。




もちろんこのように歴史自体を創造的に解釈するというトリッキーな発想ではなくとも、観点を絞り、独自の視点で創造の歴史を編集していくことも刺激的です。例えば「スター性」や「マイム」をテーマに発表したゼミ生はそのようなアプローチだといえそうです。スター性とは、一体なんなのでしょうか。私たちは日々様々なメディアを通じて「スター」の情報を知り、夢中になったりします。スターたちはどんなタイプに分けられ、スターとして認められるにはどんな条件があるのかについて考察された発表がありました。マイムとはバレエの専門用語で、両手で左胸のあたりを押さえると「愛する」という意味になるなど、特定の意味を表現し、伝達するためのジェスチャーです。発表者はマイムが人を感動させるのは、演者の身体に相反する方向の力が張力を生むことが重要なのではないかと自身の仮説を語るのですが、それを自らの実演も交えながら行うことによって、より魅力的なプレゼンテーションになっているのが印象的でした。




もちろんすでにある程度定まっている歴史を、自分なりにアップデートすることも創造的な作業です。例えば美術について発表をしてくれたゼミ生は、美術史をおさらいしながら、感情の表現史についてプレゼンテーションを行いました。具象絵画、抽象絵画問わずどんな感情が表現されているかが話されます。人生の虚しさが表現された静物画であるヴァニタス画や、悲しみを帯びたアンフォルメル、コロナウィルスが猛威をふるうなかで発表されたバンクシーのストリートアートから読み取れる愛のメッセージなど様々な事例が紹介されました。
 
音楽についてのプレゼンテーションもありました。東日本大震災以降よく聞くようになった印象のある「音楽の力」について、発表者は娯楽目的以外で成立した近代の音楽に対象を絞って整理を試みます。ここで革命歌や反戦歌、復興支援やチャリティーソング、音楽療法の3つが近代において登場したことが指摘されました。ゲストからのフィードバックでは音楽が全体主義や国威発揚のプロバガンダに利用されることなどがコメントされ、演劇のワークショッププログラムを手がけることもあるゲストからは、そのような場で歌唱が生む一体感の効果について、実体験に基づきながら語ります。発表者もそのような一体感には興味を持っており、サウンドデモについてもっと調べてみたいという希望を述べました。




他には「言葉による記述にかぎらず 非言語的なふくらみ・五感による編纂」を重要視するこのゼミならではの発表として、蜷川幸雄とのコンビでも知られる清水邦夫の『楽屋』を下敷きに一人芝居を演じたものもありました。「幽霊と三人芝居してみた」と題された演劇が始まると、マンダラが一気に劇場のような空間に変容します。それはその創造性の発露に、あの場にいた全員が没入した瞬間でもありました。本来は4人で演じられるものが、1人で演じられることによって欠落した3人の登場人物を幽霊として象徴化し、虚構と現実の間を漂うような体験を私たちに与えてくれました。様々な解釈が可能な作品であり、そのためゲストたちのフィードバックもそれぞれに観点が異なり、興味深い感想が次々と飛び出しました。例えばUoCの飯塚帆南は、マンダラに元からあったものを小道具として上手く使っていたことや、マンダラの舞台としてのポテンシャルが見出せた点などについてコメントしました。
 



オリジナリティ溢れる発表は演劇だけではありません。自身の設定したコンセプトに基づいた本を制作したゼミ生もいました。人生における「選択」をテーマに制作されたそれは、偶然に満ちていながらも、後から振り返るとどこか必然的であるような私たちの生の在り方を本というメディアに落とし込んだものでした。ゲストからは読者の選択によって展開が変わるゲームブックのようだという声が聞かれましたが、ウォルト・ディズニー、オノ・ヨーコ、Mega Shinnosukeという発表したゼミ生が関心を持つ3人の人物の生き方を通じ、人生の選択について問いを投げかけたプレゼンテーションとなっていました。

ゼミ生たちの発表は結果的に予定時間を大きく上回り、闊達な議論と未来観の交換が行われ終了します。ゼミの雰囲気は終始和やかに進行し、自由な形式で行われた発表は、そのバリエーション自体が、みずみずしい創造性の豊かさを何よりも証明していました。



Catalyst
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星出 祐輔
UoC ディレクター

CREATIVITY FUTURE FORUM 全体統括。「創造性全史」「企業変態」「フィジカル × サイバーの新しい次元の感動体験モデル」を研究中。慶應義塾大学SFC(総合政策学部)非常勤講師。慶應義塾大学SFC研究所社会イノベーション・ラボと協働で、日本全国をフィールドワークしながら「創造性を引き出す」教育プログラムや「問いづくり」プログラムを実践中。コラボレーション・集合創造知のモデルを研究。福岡県出身、神奈川県逗子市在住。

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