2022.6.24

創造性ゼミ 2022

【連載】カーボンニュートラルと創造性 ~脱炭素による経済発展を自分の仕事にしてみよう~ (2022創造性ゼミ第5回)

2050年カーボンニュートラル宣言。脱炭素の挑戦をブレーキではなく成長のエネルギーに変えることでこの目標を達成できないか?というのが産業経済社会が抱える最大の課題です。

この課題に対して経済、テック、哲学、文化…さまざまな世界の第一線で活躍するチャレンジャーをゲストに迎え、その刺激を浴びながら議論と創発を行い、連携して複数のプロジェクトを立ち上げることを目指す「カーボンニュートラルと創造性ゼミ」での講義と議論の模様を、毎週金曜追加更新の形で配信動画と参加者によるレポート記事としてお届けしていきます。


田村 裕俊

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UoC カーボンニュートラルと創造性ゼミ 第5回「エネルギー革新に向けた企業の挑戦」レポート


ナオ(後藤直之)


UoCゼミに参加して今回で5回目のゼミになる。あっという間に半分の課程が経過したことになる。

毎回非常に個性的な講師の方にいらしていただき、日常の仕事では全く触れることのなかった世界に触れることで、とても多くの刺激を受けている。

帰り道、ゼミの内容を思い出しては、その刺激で脳の中がかき回されるような感覚に陥るのだが、今回はまた一段と超刺激的で脳みそをグチャグチャにされる感覚を味わった、まさに神回であった…                                     







地球温暖化の進行が止まらない。そんなことはよく知っている。漫然と日々を生きていても温暖化のニュースはよく耳にするし、ゼミに参加してから関連書籍も何冊か読み、地球温暖化の深刻な状況やこれから先の未来の厳しい予測もたくさん学んでいる自負があった。しかし私はなんとなく温暖化について知っている気になっているだけだった。今回のゼミの冒頭にあった山内さんによる地球温暖化の説明は、今までのものよりもかなり深く、細かな資料が用いられており、具体的な数字とともに解説をしてもらえた。地球温暖化がまさに今目の前で進行中であり、このままではまずいということを、まざまざと数字で見せつけられた。





地球温暖化の原因として挙げられている温室効果ガスは年間で50ギガトン(500億トン!) の排出量で、そのうち約64%が化石燃料由来のCO2だそうだ。今現在日本に暮らしていて、日々とても快適に過ごせているのは、CO2排出を伴う多くのエネルギー消費によって成り立っているというワケだ。しかし一方で温室効果ガスが原因で地球の気温は上昇を続けている。2020年段階で産業革命期の1850年から約1.1℃上昇をしている。このままいくと2030年頃には約1.5℃の気温上昇になってしまう。1.5℃以上の気温上昇は、急激な気候変動を起こし人間社会のみならず生態系にまで大きな影響を及ぼす、という予測が立てられているそうだ。確かに日本だけで考えても、2018年の西日本豪雨・2019年の台風による大水害・2020年の熊本豪雨など、ここ数年の気象災害は、今までになく大規模で深刻なものが増えている実感がある。まさに今「脱炭素」に取り組まなければ、我々の社会は存続出来なくなってしまう、ということで世界は大きくシフトし始めているのだ。

地球温暖化は止めなければいけないが、じゃあ現実的に今の快適な生活を完全に捨てて、過去の不便な生活に戻れるのか、と思った時、大声では言えないが個人的には「NO」ではないかと思っている。となってくると、今まで通りの快適な生活を継続しながら、いかにCO2の排出をおさえるか、ということがこれからの社会では必要不可欠になってくる。つまり化石燃料由来のエネルギーから再生可能エネルギーに置き換わっていく中で、いかに安定的に再エネを供給出来るかということが大きなポイントになってくる。

カーボンニュートラル社会を実現するためには「再エネ×DX」が不可欠になってくる、と山内さんは言う。再エネをITで管理・活用し、適正な電力運用をしていくというものだ。さらにそこでポイントとなってくるのは、再エネをちゃんと貯めておくことができる蓄電池である。




再エネ+蓄電池の組合せによって安定的な供給が実現出来るようになる、というワケだ。近年の蓄電池の導入コストの低下により、2025年には再エネ+蓄電池の発電コストが火力発電のコストよりも低くなるという予測が立っている。2025年!そう遠い未来ではなく、もうすぐそこにある未来の世界の話なのだ!

現在の蓄電池の最有力候補はリチウムイオン電池だ。スマホやタブレット、それを充電するためのモバイルバッテリーなど、現在の生活においても欠かせない存在である。リチウムイオン電池を製造するためには、銅、コバルト、リチウム、ニッケルなどが必要である。今後リチウムイオン電池の需要はますます拡大し、2025年以降は需要が供給可能な量を上回ってしまい、完全に供給不足に陥ってしまうことが予測されている。しかもコバルト・リチウム・ニッケルという「レアメタル」と呼ばれる資源は希少であるがため、2021年以降一気に価格が高騰している。普及とともに下がると予測される蓄電池コストは、この先素材の供給が追いつかず、このまま行くと結果的にコストは上がってしまうということになる。





山内さんは「元素戦略」という観点で、資源の乏しい日本ならではの考え方で、蓄電池の研究開発をし、「全固体ナトリウムイオン二次電池」を実現させた。




日本にはまだまだ技術はあるが、資源がない。山内さんは材料・デバイス開発において、レアメタルのような資源に依存しない元素戦略を用いることを第一に考えているとのことだった。「いい素材を使えば、いいものは出来るんですよ。でもそれじゃあダメなんです!」という言葉がとても印象的だった。あくまでサステイナブルな物作りということが元素戦略のベースなのである。

この「全固体ナトリウムイオン二次電池」は、高い安全性を実現させながら、コバルト・リチウム・ニッケルを使用しないことで、資源の安定的な確保も同時に実現させることができている。これはなにより日本の技術力が高いことの大きな裏付けだが、それを実現させることができたのは山内さんの開発にかける熱い想いが必要不可欠なのだったのだろうということが、今回の1時間のゼミを通してなにより感じることができた。それだけ山内さんという方の個性が輝いていて、その熱い想いを肌で感じ取ることが出来たのだ。

今ゼミのテーマでもある「創造性」ということを考えた時、今まで登壇していただいた方たちは、それぞれ「個の創造性」に長けている人々だという印象があった。今回登壇していただいた山内さんはその中でもずば抜けて、「個」の力を持っている方で、山内さんのパーソナリティにもゼミ員みんな、興味が湧いたに違いない。

山内さんの勤める日本電気硝子という会社は、もともと「日本電気」=NECの関連会社でガラス部品(家電商品の真空管など)を製造する会社であった。あくまで「ガラス」の会社であり、「電池」をメインで製造をするわけではなかった。日本電気硝子において、電池は完全に新規事業にあたるものであった。その中でこの「全固体ナトリウムイオン二次電池」を実現させた山内さんはかなりの異端児であったに違いない。会社組織の中で「個」として、どのように意志を貫いたのか、という質問が出た。

私はきっと山内さんの武勇伝的なものを少し期待していたのかもしれない。周りの話に耳を傾けることなく、孤独でも自分の研究開発をひたすら貫き通した、というようなエピソードが出てくるのかと思っていたら、全く逆の話であった。山内さん曰く、「この開発は一人でやったわけじゃないです。自分のわがままを許してくれた上司と仲間にとても感謝しています。」ということだった。山内さん個人の「創造性」はもちろんあるのだが、それを支える仲間や上司がいて初めて実現することができたという話であった。「個の創造性」というものは大切だが、それを支えるチームがあって初めて力が発揮されるのだということを学んだ。当たり前のことかもしれないが、目から鱗が落ちた。

この第5回のゼミを通じて自分が強く感じたことは、自分でも何か出来ることがあるかもしれないということだ。ゼミの他のメンバーや第4回まで個性の強い登壇者の方々に会った時、かなり強烈な「個の創造性」を目の前にして、若干びびっている自分がいた。「自分にできることなんてあるのだろうか?」というのが正直なところであった。ただ今回のゼミを通して、自分一人で何か生み出すことが出来なくても、チームの一員として誰かを支えることは出来るのではないか、と思えるようになった。このゼミも折り返しに入る。来る「脱炭素社会」に向けて、何か具体的な形として残せるようなものを作っていきたいと改めて強く思った


Catalyst
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山内 英郎
日本電気硝子㈱ 研究開発本部 開発部 グループリーダー

1980年生まれ(42歳). 2006年 福井大学大学院 工学研究科修了.    同年 日本電気硝子(株)入社.今日まで開発に従事.専門は有機・無機材料・電気化学. ガラスのもつ無限の可能性を引き出し、豊かな未来を切り拓くモノづくりに挑戦している. 最近は、全固体電池の実用化に取組む. 2017年 全固体Naイオン二次電池を創製.室温作動に成功. 2018年  ↑  日本セラミックス協会 『技術奨励賞』を受賞. 2019年  ↑  米セラミックス学会に論文が掲載.『年間トップダウンロード論文』に選出. 2020年  ↑  Nature社のScientific Reportsに論文が掲載.ダウンロードランクTop3に選出.

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