2022.5.20

Human Creativity

【連載】Z EYES トビタテ!Z世代の視点 Vol.4

この連載はUNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)×トビタテ!留学 JAPAN*が企画した連載プロジェクトです。本プロジェクトは、海外経験のあるトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム奨学生(以下、トビタテ生)を対象とし、トビタテ生が各々持っている"創造性の種"を明らかにします。“創造性の種"に触れ合うことで、思考・発想の転換の第一歩を踏み出し、皆さんが何らかの「アクション」を起こすきっかけになれば幸いです。



プロフィール

大津留香織。博士。トビタテ!留学 JAPAN 日本代表プログラム大学生コース1期生。2014年に南太平洋のバヌアツ共和国へ留学。学部時代には法律学部に入学したが、近代司法システムに限界を感じ大学院で文化人類学を専攻。身近な紛争から、イラク戦争、東日本大震災、歴史的葛藤の対立を考えるなかで、紛争後の関係修復に焦点を置き、犯罪、法、物語、共感性といった分野を横断する研究に取り組む。現在は、台湾の台南應用科技大學にて助理教授として所属。自著に『関係修復の人類学』(成文堂)。

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留学中に感動したモノ・コト、その中で感じたクリエイティビティとは



私が滞在したバヌアツ共和国のエロマンガ島は、近代司法制度の影響をあまり受けず、開発もほとんどされていない土地で、毎日が新鮮な発見に満ちていました。

物理的なインフラもそうですが、基本的にすべてのことは自分達で決めなければならないということも実は大変なことです。島では事件が起こると、被害者と加害者を含めて集落ぐるみで話し合い、集団で謝罪や賠償をします。賠償として女の人が交換され、婚姻関係が結ばれたりもします。これはつまり加害者と被害者の家系が交わり、親類になるということです。

また新しく生まれた子供たちが、死んでしまった人の名前や土地財産を受け継ぎ、代わりになるということだと説明されたときには、あまりにあけすけな等価交換の理屈に驚きましたが、むしろ重要なのは、そこまでして損なわれた共同体の損害を取り戻そうとする姿勢です。

これらの「解決方法」は、島の人々にとっても大変なのです。それでもやるし、やりようはある。彼らはその場にいる人たちとの関係性をいかに持続していくかということについて常に考え、創造的に行動していました。その場、その人、その関係性に応じて、自分もその一部となりながら、他ではないコミュニケーションを選択し唯一無二の未来を造る、ということとおもっています


帰国後・最近感動したモノ・コト、その中で感じたクリエイティビティとは



そのような生活のなかで、感動したというよりむしろ衝撃だったのは、日本にいた自分がいかにそのような創造性に乏しいかということ、そして今までよくもまあ、そのように他人に無関心な状態でも生きてこられたなあ、ということでした。

問題を感じてないわけではなかったのですが、今まで生きてこられたのは奇跡だとおもいましたし、これまで出会った人々に感謝しながら本当に多大なるご迷惑をかけたことを反省しています、すみません。

さて、そうして改めて、これまで出会った日本の人々もまた、決まりのないなかでどのように他者に配慮し、協力し、時間や場に対する高い創造性を発揮していたか、いちから洗い直すようにこれまでの経験が思い返されてくるようになりました。お皿を洗っているときにふと思い出しては、あぁあの人のあの発言は、みんなにバカにされていたけど、あの場を救う配慮からきていたのだなあ、そのことに、本人さえも気づいてなかったなあ、などなど、人間関係の創造的インタラクションの奥深さについて考えるようになったのでした。


私にとってのクリエイティビティと、それを今後どう活かしていきたいか


このようにバヌアツと日本を往復しながらわかったことのひとつは、近代司法システムが用意する「解決」には、「持続的な納得」ということがすっかり見落とされている、ということでした。その理由は、そもそも近代司法制度が人間ひとりひとりを匿名かつ同じような存在(個人)として把握し、一律に処理するための制度だからです(それはそれで必要なんです)。

しかしすべての事件や葛藤は、当事者にとっては唯一無二の人生の出来事なわけで、それに対して持続的な納得をもたらすためには、一律に処理しようとする近代司法の仕組みだけでは決定的に足りないのです。「法律でこうなってるから」で納得することができたらたくさんのことが大変簡単になりますが、このセリフの先にあるのはたいてい関係性の断絶です。

冒頭の加害者側と被害者側が婚姻関係を持つというのも、たくさんの人々が協力して、悲しい事件を契機に新しい関係性/共同体を作り直し、よりよい未来を築こうと努力するというクリエイティビティあふれる実践といえます。このような人間の共同体のあり方を、自分なりに実践したり、もっとたくさんの人に知ってもらうことが、これからのわたしの課題です。


自分を表すハッシュタグ


#人類学
#Restorative Justice
#共感性

尊敬するヒト・モノ


犬養毅
学校教育では五一五事件で暗殺された人と紹介されると思うんですが、高校で近代政治史にはまっていたとき、古島一雄という人の本を何冊か読んですっかり影響され好きになってしまいました。古島さんはとにかく犬養さんが大好きで、政治人生50年間で思い出すのは犬養さんのことばかり。

犬養さんは義侠心あふれる清貧政治家で、党利党略を嫌い、口が恐ろしく悪くていろんな人に嫌われるんですが、義を通す人で、ファンを抱えていました。政治生涯の最後に総理大臣になった犬養の死と同時に、戦前の政党議会政治が終わりを迎え、軍人が総理大臣をつとめるようになりますが、それはともかく「なぜ5月15日のあの夜、総理官邸に立ち寄らなかったのか」と後悔する古島さんの心中を察するにあまりあります。ああ古島。

最近感じたクリエイティブなモノ


自分の靴底
最近買った靴が足に合わなくて痛かったため、買ってきた靴底を切って貼って重ねたりして、自分の足に合うように改造しました。世界に一足の私の靴底です。とても心地よくて満足しています。

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*トビタテ!留学 JAPAN とは
文部科学省の官民協働留学促進キャンペーン。若者の留学機運を高め倍増する目標を掲げて2013年にスタート。主な取り組みである「日本代表プログラム」は、100%民間の寄附を財源とし、民間企業約250社から121億円以上の寄附を受け、返済不要の奨学金でサポートする留学支援制度です。既に約9,500名以上を選抜し約100か国に留学しています。その他、高校生向けの海外関心喚起施策「#せかい部」を展開するほか、オールジャパンで留学を応援しています。
https://tobitate.mext.go.jp