2022.9.27

創造性ゼミ 2022

【創造性ゼミ2022を終えて】カーボンニュートラルと創造性

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

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「私はこれがおもしろい」その創造性が脱炭素のカギとなる
二酸化炭素を減らす創造性とは?

 
──なぜカーボンニュートラルを学ぶんでしょうか?
 
気候変動というものが今一番大きな波としてあるわけです。2050年CO2排出量を0にするカーボンニュートラルを目標に掲げてみんなが「石器時代に戻るんじゃないか」って慌てました。
 
でも服にしたって大量生産だとすぐ捨てるけど、注文をして服を作ればその服は捨てないですよね。このゼミに来てくれた京大の諸富徹先生が「モノそのものは最小化するけど、価値は最大化して経済を活性化していく」ことを提言されました。カーボンニュートラルを実現し、そのこと自体を成長の動力にすることが真の課題だと。
 
我慢すべきものと思うと誰もやらなくて、おもしろくて儲かると思うとみんながやる。資本主義である限りは与える人と欲しがる人が必要です。国も企業も頑張ってる今、おもしろいなとか儲かるなとか思えるものを見つける。しかもそれを個々のレベルで、自分の家で、職場で始める。ボトムアップでやってみることにこのゼミでは取り組みました。
 
──環境と経済の両立に個人個人で取り組むことですかね?
 
環境と経済の両立が必要と言いましたが、それは今いろんな企業の経営課題になってることなんですね。環境に悪くて安いものだと売れないし、下手すりゃバッシングだって受けるわけですよ。今、事業というのは社会を良くすることとイコールに近くなっていってる。
 
例えばUoCがホームみたいな場所として機能して、実際に事業会社に来てもらってどうスケールするかの話をしてくれてもいい。そんな場所としてこのゼミを作ったというのもありますね。




──カーボンニュートラルにおける創造性とはなんですかね?
 
カーボンニュートラルを一人一人がチャンスに変えることを一つのクリエイションだととらえる。
 
『トム・ソーヤの冒険』の中でペンキ作業を命じられた話があるんですけど、トムはすごく楽しそうにやるんですよね。するとあんまりにも楽しそうだから「俺にもやらせろ」って友達たちがたくさんやってきてトムはお菓子やおもちゃと引き換えにやらせてあげる。あの創造性。一人一人が「これはおもろいな」と感じることから始まって流行っていくものを作る。
 

楽しんでいる先人のシャワーを浴びる

 
──トムソーヤ、たしかに創造的ですね。ゼミではどんなアプローチで取り組んだんですか?
 
日本でどこから二酸化炭素が出てるかのデータを、発電などエネルギー生産時の内訳でなく最終消費時の内訳で分類した表で見てみると、産業と家庭が多くを占めます。でも産業で働くのも家庭にいるのも同一人物ですよね。なので全人格的に統合的に楽しく、自分のできることをそれぞれ考えてみようと。
 
そのためには楽しんでやってる人を呼んできて、シャワーを浴びるようにいろんな角度からいろんな話を聞いてみる。初回と最終回を除いた8回にそれぞれゲストが来て自分の話をしてもらいました。
 
脱炭素の課題を経済面からとらえる前田雄大さんから始まって、太陽光発電の電気でフェスを行うミュージシャンの佐藤タイジさん、そして森田真生さん、いとうせいこうさんには哲学の面から気候変動を見つめ直してもらいました。
 
他にも今後必要になる技術、蓄電池を作る方だったり脱炭素のコンクリートを作る会社の方、環境先進国であるスウェーデンやコスタリカの話、環境映画の監督。仕事の一つとしてやってる人もいるし、学術研究的なアプローチでやってる人も文化的活動としてやってる人もいます。





──楽しんでやる人たちのシャワーを浴びてゼミ生の方々の変化もありましたか?
 
当然、絆だったり人間関係のケミストリーはありましたね。僕も入れて12人を3つのホームというグループに分けてオンラインで飲み会をしたり実際に集まったり。ゼミの発表でも自発的に組んで2人でやりたいという組が現れたりね。あとは期間限定で東京に来ていたゼミ生のために土日に色々なところを見て回ったりもしていたようです。
 
一番はゼミで刺激を受けて楽しくやっていくことですかね。そして実際にアクションしていくことを皆さんやってました。
 

目の前の人に誘発される創造性

 
──たとえばどういうアクションだったんですか?
 
環境映画『マイクロプラスティックストーリー』の回ではあるゼミ生が他の参加者と意気投合して、三軒茶屋で自主的な上映会を企画して、そこに世田谷区長が来てくれることになったりですとか。
 
ゼミ生の方は元々そういう活動もしてたようですけど、このゼミで深呼吸してパワーアップしているような印象でした。そういう自発的なアクションは、登壇した人たちや周りの参加者から勇気づけられている部分がやっぱりあると思うんです。
 
──創造性という面では何か起こりましたか?
 
大きい事例は2つあって、1つは中古品を集めてリセールしてる、リユースの事業をやってるゼミ生がいるんですよ。その人が3次流通というのをやると。作られた用途で使い切るだけではなく、用途を変えて価値を上げる。
 
機能を形で示す、答えを形で示すのがデザインの仕事だとすると、アートは問い、問いかけで見た人の心をざわざわさせることだと。廃材にアートとして命を吹き込み流通させると、そもそもの用途以上に経済価値が上がる。かつ見た人をざわざわさせて巻き込んでいく、その波及の発想は創造的でしたね。
 
もう1つはさっき言った2人組の発表なんですけど、製鉄の副産物、鉄鋼スラグで藻場が再生されるという話をゼミで学びました。そこでできた昆布を脱炭素昆布として商品化しようというアイデアが出ました。
 
今、脱炭素の製品サービスを求める潮流を消費側に作ること自体がとても難しいんですよね。これをやるのに、脱炭素の名物を作ってしまおうと。おもしろおかしく流行らせようとヒット曲の替え歌で「恋するフォーチュンケルピー」っていう歌を二人で作っていた。ケルプって海藻の意味の英語ですけど、クッキーの替え歌なのでケルピー(笑)。これをブルーカーボンのシンポジウムや藻場再生に取り組む自治体にどんどん持ち込んでいけばいいと思いました。






一人一人ができることがある

 
──すばらしいアイデアですが、もともとすごい人というか、そこまではっきりと何か作れない方も多いのでは?
 
問題提起として面白かったのは大手出版社に勤める方で、自社のSDGsの取り組みを見直してみたら各雑誌特集してるのに自社の企業HPには何もないことに気づいたと言うんです。そもそも出版って何か目的があっての手段ですよね。でも特集として記事を作って終わりで出版自体が目的になってしまっている。なのでこれをちゃんと企業としての取り組みにしたいと。
 
いろんな産業でそうですが、今までやってたことを惰性で続けていると環境と経済を両立するのは無理な話なんですね。何かを大きく変えないといけないときに、出版を通じて何を提供すべきかから考え直そうという話。
 
──それは一人一人の仕事の気づきでもありますね。ゼミの雰囲気はどうでしたか?
 
いろんな変わった人たちを呼んできましたが、まず全員が楽しそうにやってるんです。自分自身の心が折れてしまうからかもわからないですけど、自分が楽しいと思うことをやらないと絶対うまくいかないというのが一番基本的な学びですかね。そういった名言はゼミ内でほんとたくさん出ましたね。


取材・文:大北英人



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カーボンニュートラルと創造性 ~脱炭素による経済発展を自分の仕事にしてみよう~