2022.9.27

創造性ゼミ 2022

【創造性ゼミ2022を終えて】Tokyo Urban Farming|Circular Creativity

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

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同じ危機感を持つ仲間との、楽しい革命
「粋」な循環型社会を呼び戻す

 
ーこのゼミは「創造性で都市の暮らし・文化を粋に”再生”しよう」をテーマに「Tokyo Urban Farming」(「TUF」)と「Circular Creativity Lab.」(「CC Lab.」)というプロジェクトから成っていますが、この二つにフォーカスした経緯を教えてください。
 
今、地球上の問題はたくさんありますよね。SDGsにしても17のトピックがありますし。2年前のUoC発足当初は正直「どこから手をつけたらいんだ?」と途方に暮れてました(笑)。
でも、「自分にできることはなんだろう」と考えたときに、まずは都市を持続可能な状態にしていくべきなんじゃないかと。僕らは東京に住んでいるし、UoCも東京にある。現在、世界人口の半分は都市部に住んでいて、2030年には3分の2まで増えると言われているんですね。
そこで、都市部の生活や企業のあり方を変えていくことが地球環境に大きなインパクトをもたらすであろうし、そこに博報堂の多数の企業や行政との関係も活用できるなとも思いました。
 
僕自身、この10年くらい「パーマカルチャー」という、人間と自然の関係をデザインするメソッドを勉強して紹介する本を作ったり、実践してきたんですね。それは草の根的な個人や団体による活動が多かったんですけど、そうした動きをいろいろな企業や行政と繋ぐことで大きな動きにできるんじゃないかと思って「TUF」をはじめました。
「CC Lab.」は、既存の産業構造が「作って売って捨てる」直線的な流れなので、これを創造性によって少しでも循環型にシフトさせようというのが発端です。
 
どちらも循環型社会を目指すというところで繋がっているんですね。「TUF」は自分で野菜を作って、それを食べて、廃棄物は堆肥にして、また育てるという循環。そういった少しでも暮らしに循環を取り戻して環境への意識が変わることで、他の行動にも波及していく。
都市に緑が増えれば二酸化炭素を吸ってくれるし、フードロスが減れば食物の運搬や処理コストも減って炭素排出も減る。ゼミでも課題図書にした『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン著)でも、有効な解決法としてアーバンファーミングというライフスタイルが取り上げられています。
 

 
ー都市生活から環境問題にアプローチするということでしょうか。
 
今年の夏もものすごく暑くて、もはや「記録的猛暑」という言葉もあたりまえのように聞きますよね。日本では気候変動と言いますけど、海外では気候危機と呼ばれてるんです。やはり、これが一番差し迫った解決すべき問題であろうと。
 
去年のゼミでは、経産省の方を招いて国で進める「脱炭素社会」について意見交換したのをきっかけに、今年から「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」というカーボンプライシング(炭素に価格をつける仕組み)の取り組みが440の賛同企業と共に始まっています。これはどちらかというとトップダウンでシステムを変えていこうという試みですが、ボトムアップからも同時にやっていかないといけないと思っています。
 
ーミクロもマクロも、やれることは全部やらなければと。どの立場にいても、「誰かがなんとしてくれる」という意識だと危ない状況なんですね。
 
まさに、そうですね。日本はこうした環境へのアクションなどに対して、どうしても斜に構えちゃうところがあって。今は「これじゃヤバいな」とだいぶ意識も変わってきましたけど、僕自身「社会を変えよう」というようなことに長らくピンと来てなかった頃もあったんです。でも、広告がそうした状況の片棒を担いできた責任も感じるし、だからこそ逆方向に舵を取ることもできると思うんですね。
 
今回のゼミは「創造性で暮らしと文化を粋に”再生”しよう」というタイトルを掲げていて、人が関わることで「再生(Regenrative)」するのも重要ですが、この「粋」が鍵なんですよ。創造性によって「こういった活動にコミットするのはクールだ」という風に変えていきたい。江戸時代は循環型の暮らしという意味では、最先端だったとも言われてますが、そこには、もったいないとか、儲かったら他の人にも分け与えるとか、正しいかどうかでなくて、粋という美意識があったんですね。それをアップデートしていきたい。

 


それぞれの資質を生かしてアイディアを繋げる

 
ーどういった方々がゼミに参加しましたか?
 
今回は応募の段階で、このプロジェクトに関して積極的に実践したい人を求めました。ただお勉強するんじゃなくて、行動しなくちゃいけないと思っているから、熱量は高かったですね。建築やAIを専攻している学生や、経営者、デザイナー、アートディレクターなどさまざまでしたけど、知識には差はあったものの、根本的な危機感はみんな共有されてました。
 
初回と2回目で「TUF」と「CC Lab.」について僕やゲストがオリエンテーションして、大きな課題をインプットしてもらい、3回目は千葉の鴨川で合宿しました。やっぱり机上だけで考えても頭でっかちになってしまうというか。田植えで泥にまみれることを通して、循環型社会とは何なのかを体感する必要はあるだろうと。ある程度同じ時間を過ごすことで、チームビルディングできるという効果もありました。
 
4回目以降は5つのチームに分かれて、これまで考えてきたプロジェクトに関するアイディアを発表してディスカッションしていきました。
「TUF」は来春にアーバンファーミングというライフスタイルを紹介するせ書籍を出版する予定なのでその内容をリサーチするチームや、関連するイベントを企画してみるチームがいたり。
「CC Lab.」の方では、個別の廃材の活用法を考えるチームもあれば、廃材と再生技術などがマッチングするプラットフォームををどうやって作っていくかを構想するチームとして、
ウェブサイトを作る人や、AIと廃材を絡めて早速プロトタイプをつくった人もいました。
 
ー各々の得意分野に立脚してアイディアを練るんですね。
 
パーマカルチャーでは「観察」が最初にあって「ここにある資源をどのようにつなぎあわせてデザインするか」という方法論なので、ゼミにおいても、個々のゼミ生が持っている資質や、周囲にある資源をどうつなぎ、アウトプットに持っていくかを考えていきました。
「この人とこの人を食い合わせてみよう」とか「ちょっと煮詰まってるからこの人は他のチームに入れてみよう」とか、ゼミという畑の管理人になった気がしました(笑)。
みんないろいろなバックボーンを持っているから、発想が広がって面白い意見もかなりありましたね。僕が知らないこともいっぱい見つかりました。
 

 
ー問題意識を共有した仲間とコミュニケーションできるので、すぐに議論を深められそうです。
 
このゼミは今回が3期目なんですが、以前に参加してくれたメンバーがアシスタントやってくれたり、今も定期的に集まったりしてるんです。
例えば1期目のゼミ生の一人だった大学生は、元々、気候変動に関するアクションを主導していたんですが、周りから「意識高い系」みたいに揶揄されてすごく疲弊していて。でも、このゼミで仲間が増えたことで、すごくポジティブになりましたね。僕自身、どんどんファミリーが増えていくような感覚です。
 
ーせっかくの活動を「意識高い系」で括られてしまうと、相当心細いですね……。
 
この言葉には、先の「斜に構える」ともつながる島国的なものを感じて、とても違和感があって。意識「高い/低い」ではなくて、人間として意識が「あるか / ないか」。地に足が「着いてるか、いないか」だと思うんです。地球が火事みたいな状態のなかで、そこに意識が向かずにエンタメやSNSなどに没頭してるってのは、ほとんど夢遊病か奴隷のような状態だと思うんですね。
自分自身はもちろん、みんなの未来に関わることなので、一人一人の創造性を生かして変えていかないといけない。これはそんな意識が世界中でつながって広がっている、楽しい革命なんです。
 


取材・文:張江浩司



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