2022.10.19

創造性ゼミ 2022

【創造性ゼミ2022を終えて】創造性全史:「0次情報」から生まれる創造性

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

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ゼミ生一人ひとりの「感動」と
人類30万年の「歴史」を結ぶ


ー「すべての人間は、生まれながらに創造的である」という理念をかかげるUoCにとって、このゼミ「創造性全史」はそのど真ん中をいくようなテーマ設定をしていると思います。ゼミが開講するまでの経緯を教えてください。
 
2019年にUoC準備室が立ち上がり、僕がUoCに来たのは2020年の4月になります。「創造性全史」の研究はすでに始まっていましたが、昨年度の秋に開催したCREATIVITY FUTURE FORUM 後に主宰のケンタさん(市耒健太郎)から研究リーダーとしての打診があり、それがきっかけとなって「創造性全史」ゼミがスタートしました。
進めるうえで大事にしたのは、研究と教育、そして未来創造を繋いでいくことです。ゼミなので教育色は強いですが、その3つの柱とそれぞれの好循環を意識しながら中身を構築していきました。




ーそれでは具体的に、「創造性全史」とはどのようなゼミなのでしょうか。
 
ひとくちに全史といっても古今東西、自然科学・人文科学・社会科学たくさんのものがあります。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史~文明の構造と人類の幸福』をはじめ、138億年前の宇宙ビッグバンから現在までの歴史を探究するビッグヒストリー、森羅万象さまざまな専門性に特化したものもあり、博物館に足を運べば人類が発明し編み上げてきた科学や技術の結晶の歴史に触れることができます。
 
そんな中でこのゼミが出発点としたのは「わたしたち人類は、なにに感動してきたのか?」という問いです。人類30万年の創造性の歴史は文化と文明のめくるめく感動のドラマをたどる旅でもあります。
 
ゼミ生一人ひとりがもつ好奇心や童心、恋する心やユーモア、夢想や欲望といった細胞レベルのみずみずしい感受性と、人類30万年の創造性の軌跡をダイナミックに結んだり、往還しながら、オリジナルの全史編纂と未来創造の足掛かりを見出すことを目指しました。
 






ーゼミを進めるにあたっては、どういったことに気を付けられましたか?
 
全体のプログラムは大きく3部構成にしました。まずは最初に「掘り起こす・問いを立てる」ことをおこない、次に「研究する・調べる」という段階から「創り上げる・編集する」という作業に進みます。実際は線的にきれいに進むのではなく、ぐるぐる回ることになります。
 



このゼミは、一人ひとりがもっている感情や感性、好奇心を大事にしているので、歴史を調べていくうえで陥りがちなウンチクっぽくなることを避けました。自分が学んだ豆知識や雑学を語ることが歴史を語ることと同一視されがちですが、このゼミはあくまで「創造性」なので、一人ひとりがもっている感動の源泉を軸にするのをぶらしたくなかったんです。
 
だからゼミの序盤は、いきなり歴史的なことを調べるのではなく、「掘り起こす・自分なりの問いを立てる」ことをまずおこないました。それはつまり、自分自身のほとばしる好奇心や衝動、創造性の導火線や発想の出発点になるようなものを掘り起こしましょうということですね。
 
でもそうなると自分探しになりすぎてしまう面もあるので、自分を取り巻く世界や他者との関係性の中で、どうしても反応してしまうものがあるとか、立ち上がってくるものについて探索してもらいました。
 
ーどんなことにゼミ生たちが取り組んだのかを教えてください。
 
最初に自分の感受性を見つめ、好奇心のありかを探索する「インスピレーションハンティング」をゼミ生たちにやってもらいました。ざっと言うと日常生活の中で少しでも直観でピンときたモノやコト、トキの写真をたくさん撮っておいて、その中から感情の振幅の大きいものを数枚選んで、なぜ自分の心が揺さぶられたのかを言語化してもらうオリジナルワークです。ゼミ生が選んで言語化したもの対して、一人ひとりに「こういうふうなものの見方、世界認識の方法をしているんじゃないか」、「好奇心のありかはここにあるんじゃないか」などフィードバックをしながら丁寧に対話をおこないました。
 
4回目のゼミでは演劇を通じたワークショッププログラムを行いました。これは個々人の記憶や思い出から印象に残っているエピソード・ものがたりを土台に脚本を作りあげ、さらにはその当時におこった社会的な出来事を織り交ぜながら、演出もゼミ生自分たちでおこなうというものです。身体知を通じて感動の源泉、好奇心のありかを探り合いました。

 



ゼミ前半を終えて、ゼミ生全員と1on1の面談をして、なにをテーマに全史を編纂していくのか、どんな企画と表現にしていくのかの議論をしながら方向性を絞っていきます。
もちろん一旦決めたものでも、研究を深めていくなかで「やっぱこっちだよね」とかみたいなことはあります。例えばあるゼミ生は「ファンタジー」「空想性」を軸に研究を進めていきたいと話していたのですが、最終的には偉人がもつ「スター性」や「一発屋性」についての発表になりました。
さきほどお話した3部構成の流れは、この流れを守らなくてもいいし、何周もするのが本当は良いんだという話もゼミ生にはしています。
 

 

自分なりの表現方法を発見する

 
ーゼミ生たちの最後の発表は、特定のテーマで美術や音楽の歴史を振り返るオーソドックスなものもありましたが、演劇をしたり本を作ったり、とてもバラエティに富んでいました。でもそれはインスピレーションハンティングなどを通じたユニークなカリキュラムの結果として考えると納得がいきます。
 




さまざまなスタイルの発表があったことは、このゼミが「全史」というテーマを掲げつつも、自分なりの表現方法を発見することを大事にしたからです。企画とクラフトの両輪があってオリジナルの全史は成立します。演劇をやったゼミ生はずっとモヤモヤしていました。最後は自分が一番しっくり来る表現とはなにかと削り尽くした結果、演劇スタイルで発表することになりました。本をつくったゼミ生は、本の作成を超えて読み手の発想支援ツールまで拡張しました。また、架空の年表を制作したゼミ生は、バイオ医療について大学院で研究をしているのですが、ふだんはできない空想や妄想を思う存分に発揮して最終制作に取り組んでくれました。


 
ーゼミには多様なバックグラウンドを持つゲストも参加されていました。
 
ゼミの進行にあわせて3回に1回の頻度で、創造的触媒としてゲストを呼んで、知性と野性を混ぜる実験的な取り組みをおこないました。演劇を通じたワークショッププログラムでは、プロの演劇演出家、その他にも文化人類学者や空想地図作家など、多種多彩なプロフェッショナルが参画し、協創しながらゼミ全体を盛り上げました。

 

 


2次情報に溢れた社会だからこそ

 
ーこの「創造性全史」において、重要なのはどのようなことだったのでしょうか。また、ゼミが終了し、振り返って思うことを教えてください。
 
本ゼミは「0次情報」を大事にしました。2次情報は自分起点ではなく他者が解析や編集したもの、1次情報は自分の生活体験を言語化したものです。0次情報は、まだ言葉になっていない記憶や感性であり、一人ひとりがもっている創造性の源泉です。現代人の一日分の情報量=平安時代の人の一生分の情報量だと言われたりしますが、現代はありとあらゆる2次情報で溢れかえっています。そうした時代や社会状況の中だからこそ、自分の埋もれた感覚・0次情報を掘り起こすことが、「全史」に向き合う際に重要なのだと思います。

創造は、問いと思考から生まれ、問いと思考は一人ひとりがもっている、みずみずしい好奇心や感受性(0次情報)から生まれます。ここ数年、教育現場では「探求学習」や「創造学習」というアプローチが注目されていますが、これからの教育現場にもフィードバックできる未来創造知のヒントが「創造性全史」ゼミにはあると考えています。
 
また、今回のゼミ生はあえて現在在学中の(大学・高専・高校・中学校・小学校高学年)を対象に絞りましたが、ゼミ生一人ひとりの創造性を狭めることなく、開かれた状態を最後まで維持しながら、自由に楽しみながら創造性の歴史を探究することができたのではないかと思っています。一過性の学びではなく、研究する歓び、つくる歓びといった創造的体質づくりの端緒にもなったのではないかと考えています。次回は世代や専門性を超えて、もっともっと創造的なカオスを創っていきたいです。



取材・文:塚田



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