2022.8.8

Diversity Equity & Inclusion

Know difference Love difference 企業インタビュー#2 サイボウズ株式会社

本橋 彩

#DE&I  #Diversity Equity & Inclusion  

「Know difference Love differenceゼミ」では、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)をテーマに、企業の取り組みについて研究し、インタビューを行っています。DE&Iは、私たち誰もが持つ “クリエイティビティ” を発揮して、イノベーションを起こすために必要な土壌です。一人ひとりがエンパワメントされ、よりよい未来を想像するために、私たちに何ができるのでしょうか?この問いと向き合い、研究員が行ったインタビューを紹介します。
第二回は、サイボウズ株式会社の「ダイバーシティラ部」から、永井千晶さん、浅野嶺さん、川平朋花さんにお話をお聞きしました。ダイバーシティラ部は、D&Iの促進を目的に活動するサイボウズ社公認の部活動のひとつです。
当時、新入社員であったメンバーが立ち上げたダイバーシティラ部。その時に感じたモヤモヤをそのままにせず、向き合うことで、会社に新たな風を吹き込んでいるような印象を持ちました。強い思いがあるからこそ、無理をせずに、自然体で取り組もうとするみなさんの姿に惹かれました。



――「ダイバーシティラ部」はどのような経緯で立ち上がったのでしょうか?
永井:2018年、入社してまもなく、同期のメンバーと立ち上げたのがダイバーシティラ部(以下、ラ部)です。サイボウズでは、多様性を尊重しており、尊重されているという実感もありましたが、セクシャリティについては、マイノリティの人たちがいないことが前提のような空気を感じていました。同期と話しながら、自分たちにできることはないかと、勉強会からスタートしました。
 
――どのような活動を経て、勉強会から会社公認の部活動となったのでしょうか?
永井:最初は手作りの発表会のようなものだったのですが、基本的な知識を伝える勉強会を数回開催していました。結構人が集まってくれて、部屋に入れなかったり、またやってほしいという声をいただいて。そこから活動を広げていこうと、外部講師を招いた勉強会を行なったり、関心があることを示せるようにPCに貼るステッカーを作ったりしました。次第に、お金や場所の課題が出てきて、やりたいことに対して、できないことが多くなってきたため、部活動にすることになりました。部活動になってからは、週一回のランチ会、飲み会、映画鑑賞など、活動の幅も部員も増え、コミュニティのような活動も増えてきたと思います。
 
――活動を続けていくために大切にしていることはありますか?
永井:「無理しない」ということです。やらなきゃ、やりたいという気持ちが強いメンバーが集まっているので、やりたくはなるんですけど、社内も世の中もすぐには変わらないことの方が多いかと思います。だから、やめないことの方が重要だと思っています。職場で活動をするということは、仕事が忙しかったり、精神的にしんどい時もあるかと思います。細く長く続けていける方が、最終的に遠くのゴールにたどり着けるのではないかと思っています。
浅野:部活という社内の制度を上手に活用するようにもしています。金銭的な支援を受けることができたり、イベントの告知や部員の募集など、活動にリズムが生まれます。自分たちだけで続けることをよい意味でしなくてよいので、制度もうまく使っていくとよいのかな。
永井:「仲間を作る」ということも言っていますね。
川平:参加のハードルを下げたり、ウェルカム感を出すなども心がけています。事前知識がなくても大丈夫とか、画面オフで参加しても大丈夫ですとか。
 
――サイボウズでは「100人100通りの働き方」を掲げられています。一人ひとりが大切にされる企業文化の中で、DE&Iが大切だと思われたのはなぜでしょうか?
永井:働く場所や時間を選べるというだけでは働きやすくならないようなことが多いのではないかと思いました。例えばトランスジェンダーの方だったら、悩みに思われている名前や服装など働き方の多様性では言及されていない範囲のような気がしていて。
川平:個人的には、「 100人100通り」の会社だからこそ、DE&Iは必要だと思っています。働く時間や場所を選べるからこそ、その事情に関するプライベートな雑談も生まれやすいです。在宅勤務の人も多いのでご家族に関するお話も多々聞きますし、割とプライベートなコミュニケーションが多い雰囲気だと感じます。そういった時に、もし、ちょっと嘘をつかないといけない、ちょっとごまかさないといけないということがあると結構苦しいかなと思うんです。事情を無遠慮に聞かない気づかいだったり、言える関係性を作ったり、お互いを傷つけ合わないために知識を身に着けることが必要ではないかと思っています。
浅野:ラ部は、社内外にDE&Iの大切さを伝える役割もあるのですが、コミュニティの価値として、安心できる場所を用意する役割もあります。コミュニケーションやアクションをどうしたらよいのかとは別に、もし社内で何かあったとしても一旦ここで相談できる。そういう場所として維持させることに一定の価値があると思いながら、取り組んでいます。
永井:ラ部の中では、あきらかな出来事よりも、「モヤッとした」という話題について話すことが多いです。抱え込んでいると辛くなってしまったりするので、ランチ会で相談したり。それに対して何かするわけではないのですが、モヤモヤが分解されるだけですっきりしたり、こうしてみようかなと思えたりするのかなと思います。
川平:結論を出すとか、次のアクションを決めるとかではなくて、「私もそういうことがあった」という話をしたり、「大変ですよね」と終わる時もあります。
 
――「100人100通りのばらばらのまま、つながりたい (※1) 」という思いに共感しました。個人のばらばらな思いにどこまで向き合えるのか、向き合うべきなのか、ラ部の活動を通してお考えのことはありますか?
永井:どこまで向き合えるのかはすごく難しい問題だと思います。私が無理をしないでやっていこうと言っているのは、限界があるよねということなのだと思うのですが……。ここまで向き合うべきと決めていたら、そこまでやれればいい、そこから先はやらなくていいとなってしまうのかなと思います。意外とここまでいけるのではないかとか、ここまでできると気持ちよく働けるのではないかとか、そういうのを考えたり、線を引き直したりするのが面白いし、サイボウズは今までそういったことをやって、少しずつ変化してきた会社だと思います。
川平:全部を会社の制度としてやろうとしなくていいのかなと思います。会社の制度で回収できないからこそ、社内のコミュニティや個人的なつながりがあるのではないかと考えています。

(※1) https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005985.html
 
――人事などと連携することはありますか?
永井:人事としてやると失敗しにくいと思うので、一度ラ部でやってみて、よければ人事に提案するということはありますね。あとは、制度でいえば、同性婚、パートナーシップ制度、事実婚の場合に慶弔休暇や祝い金の制度を利用できるかどうか、これまで明確ではなかったのですが、ラ部からの声がきっかけで、これらの場合でも制度が利用できることが明確化されました。
川平:業務としてやると、プランを出してください、結果はどうですかとなってしまうので、その制約がないのは部活動のよいところかと思います。
浅野:よい面でも悪い面でもあるのですが、制度上やるという部分と、有志の部活でやっている部分が意図的に曖昧になっているところがあります。人事には「多様性理解促進チーム」があり、公式の制度や研修を検討してくれます。一方、部活はあくまで有志の活動なので自由に機動的に動ける部分があります。その間の部分が明確に分かれているわけではないですね。
 
――サイボウズの行動指針「説明責任、質問責任」と共に大切にされている「想像責任」について教えてください。(※2)
川平:社内ですごく言われている言葉かというと、人によるのかなと思います。人間が想像できる範囲には限界がありますが、知識を得ることで、想像できる範囲が広がると思っています。自分自身も知識がなくてアクションができない時期があったので、知識をつけて、想像して、できる範囲でアクションをがんばろうと心がけています。
永井:仕事は「説明責任、質問責任」でうまくいくんです。でも、例えば、性的マイノリティであった場合に、質問されて絶対に説明しなければいけないということではないですよね。それに、毎回同じことを説明するってすごい疲弊しちゃうんです。その時にまわりが知識を蓄えることで、多少ラクになったり、少ない説明で済むことがあると思います。
浅野:当事者の努力として、声を上げて制度を変える必要があるというのはきついということがあったんですよね。
川平:「疑問に思うなら聞きましょう。聞かれたら答えましょう。」というのは、仕事をする上では当たり前なのですが、それができなくて上がらない声があったり、質問がないからよいというわけではないので、想像することが大事だと思います。

(※2)相手の納得感が得られるようにわかりやすく説明する責任、思ったり、感じたりしたことがあれば、わからないままにせずに質問する責任、相手が置かれている状況を想像する責任
参考)https://teamwork.cybozu.co.jp/blog/teamwork-explain-ask.html

―― 2018年に感じた違和感は今どれくらいよくなりましたか?
永井:いや、もうわかんなくなっちゃいました(笑)馴染んできちゃって。
川平:新しく入社するメンバーが増えることであらためて感じることが毎年あります。会社や組織ってそうだよね、みたいな部分があるけれど、「それ違くないですか?」「私ここでモヤモヤしました」というのを聞いて、そうだよなと立ち返ることが定期的にありますね。
 
――今後はどのような活動を予定されていますか?
永井:ちょうどプライド月間(6月)に東京レインボープライドに協賛していて、関連して社内イベントをいくつか実施しました。今、出し切ってしまったところです(笑)
浅野:新人さんが増えてきたので、もう一回勉強会をやろうかとか、誰かがこのテーマに興味があるとなればやったりとか、そんな感じでゆるりとやっている部活動です。
 
Catalyst
永井 千晶 サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 BPM部
浅野 嶺 サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 第1プロダクトプロモーション部
川平 朋花 サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 第1プロダクトプロモーション部