2023.1.18

創造性ゼミ 2022

『メタバース・クリエイティビティ』〜創造性ゼミ2022を終えて

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

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「メタバース化した現実」から未来を考える


2022年の「メタバース研究」が、来年・再来年にもムダにならないようにしたい



ーゼミのテーマを「メタバース・クリエイティビティ」にした理由を教えて下さい。
 
僕は「テクノロジー・フィールドディレクター」ということでUoCに複属しているんですが、テクノロジー関連で2022年のトレンドワードといえば、やはり「メタバース」でした。で、それをUoCのゼミで研究するのならば、やはり「メタバースにおける人間の創造性」の探求であるべきだな、と。つまり「人間はメタバースで今後どうなっていくのか?」「いままでの人間と変わるのか?変わらないのか?」「メタバースで一体どんな生活をするようになるのか?」などなど、そういうことをテーマにするべきだなと思いました。これはズバリ、博報堂的に言うと「メタバースにおける生活者発想の研究」ということですよね。そこに取り組んでみようと思ったんです。

かれこれ7年前から僕が主宰している「スダラボ」という活動がありまして、そこでXR領域の自主開発案件をいくつも、やりました。また、そこで出会ったテクノロジー系のプロフェッショナル・チームとクライアント案件でARイベントなども複数やりました。それで、その経験から推測するに、こういう諸々の「XR技術」をベースにしつつ、そこにSNS的な「コミュニティ要素」が加わったものが、おそらく「メタバース」なんだろうなと。
なので、今回のメタバースゼミでは、以前から一緒に仕事しているXR系の技術会社の方々にも協力していただき、知見をお借りしてます。ただ、このゼミは「技術オリエンテッド」にはせず、「ヒューマンセントリックな発想」でやっていこうと思いました。そうでなければ、UoCでやる意味がない、と思っていたからです。
 



ーメタバースは最近急激に普及した言葉のように思いますが、アイディア自体は以前からありますよね。20年近く前には「セカンドライフ」なんかもありましたし。
 
そうですね。当時のネット環境やPCのスペックを考慮すると難しかったと思いますが、今年のメタバース・フィーバーはなんだか「あの時の感じ」に似ています。しかも、やってることは基本的に一緒です。アバターになって仮想空間で、現実の距離や関係性を超えたコミュニケーションをする。大きくは、何も変わっていない。だから、どこまで生活に浸透していくかはまだわからないけれども、、とはいえ「大きな流れ」としてはメタバースの浸透や一般化の方向に、社会が進んでいるのも事実なんですよね。なので、今から、この概念の実態を把握・考察しておく必要があるだろうと思ったのです。
 
メタバース・ゼミで扱ったものだと、たとえば、二次元画面で見るものですが、すでに「V Tuber」というものは市場も出来上がっているし、大量のお金もそこで動いている。また、ゼミ講師ゲストの森永真弓さん(博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員)は「SNSに常時接続している現状は、すでにメタバースだ」とも言っていましたし、私も同感です。
VRゴーグルをかけて360°のバーチャル空間に没入するようなメタバースが普及するのには時間がかかると思うけれど、もっともっと広いレンジで捉えるとメタバース的な文化圏・経済圏は今すでに出来上がっているとも言えるし、そう考えた方がより発想が拡がって面白いんですよ。
 

”先住民”からメタバースを教わる


ーゼミ生はどんな方が多かったですか?
 
応募の段階で社会人のみとさせてもらったので、8割くらい博報堂グループ関連でした。すでにメタバースに関連するプロジェクトに従事している人はいなかったですが、クリエイターだけじゃなく営業職の方もいたし、学校教員の方もいました。「新しい領域に着手したい、現状を打破したい」という興味と覚悟があって、みなさんモチベーションは高かったです。「ここまでちゃんとやるのか!」と驚いたぐらいです。
 
 
ー初回ではゼミ生から「日常の中の、これってメタバースだと思う」、「メタバースってこう使えばいいのに」というアイディアを募って、それを基にディスカッションされたそうですが、印象に残っているものはありますか?
 
高校で先生をされているゼミ生が、コロナ禍でリモート授業が導入されて、さまざまなデバイスを使って作業するようになった自宅の机の上を写真に撮ってくださって「これがメタバースだと思う」と。たしかに、その通りだな、と。いくつもの次元や世界への扉が、今まで通りの机の上に転がっている。実際、メタバースって雑然としたものですよね。複数のプラットフォームが乱立しているし、それぞれアバターのデザインも違うし、ルールも違う。
先生の机の上のように、デバイスごとに複数の次元への入り口があって、混在している様子はまさにメタバース的だなと。
 


ーさまざまなゲストがいらっしゃいましたが、特に印象的だったのはどの回でしょう?
 
ゼミ全体のアシスタントもお願いした瀧﨑絵里香さん(博報堂)に、計3回の講義を担当してもらいました。彼女は「博報堂内で一番ネットゲームに長時間在住している」というプライドがある達人で、10年以上前からメタバースの前身的な存在でもあるオンラインゲームのコミュニティに属しているので、ある意味で「メタバース先住民」なんですよ。そこで実際に暮らしている人でないとわからない実感あふれるローカル・ルールやマナー、メンタリティーを聞かせてもらいました。
 


ー文化人類学のフィールドワークのようですね。
 
そう、「現場からのレポート」ですね。彼女は自己分析能力も極めて高いので、ネットゲームでのユーザーの行動原理を、現地語から日本語に翻訳してくれるような感じで非常に示唆に富んでいました。ゼミ生も「実際に住んでいる人の話」を聞いたら、一気にメタバースに対する実感が湧いたようで目をキラキラさせてましたね。
 


ー確かに、メタバースという言葉は知ってても、実際に体験したことはない人も多いですもんね。
 
「どんなアバターで、何をしてみたいか?」をみんなで考えるワークショップをした回があったんですが、なかなか出てこないんですよ。自分も、けっこう悩んでしまって「好きな姿になって、何でも出来ますよ」と言われても、何をしたいのかわからない。これといって、やりたいことが思い浮かばない。これは、メタバースのリアルニーズや価値を実感できていないということだと思うんですね。
 
瀧﨑さんの持論は、メタバースを成立させるには、「アバター」「コミュニケーション」「目的」の3つの要素が必要だというものです。






これは、SNSでも同じことが言えますよね。mixiも、最初は「他人の日記を読んで楽しいんだろうか?」という感じで半信半疑でしたが、コミュニティ機能が付くことで自分と同じ興味関心を持つ人々とコミュニケーションが取れるようになり、一気に面白くなりました。twitter、facebookを経て、次の段階として、instagramが成功したのは「映え」という目的が加わったからでしょう。この3つめの要素である「目的」を洞察できたら、メタバース・コミュニケーションをプランニングできるようになると思います。
 

メタバースの責任は誰が取るのか

 
終了課題として、メタバースに関する未来のニュースの見出しを想像して書いてもらいました。これも非常に質が高かったですね。
例えば、
 
「メタバース内触覚開発に成功。世界で日本メーカーが一歩リードか」
「メタバースシンドローム急増。厚労省が注意喚起」
「史上初メタバース内AIキャラクター逮捕」
  
これらは全部ゼミでのスタディに基づいてるんですよ。3つめの見出しは、rinna株式会社の佐々木莉央さんの講義で得た知見がベースになっています。rinnaはメタバース空間におけるAIキャラクター、すなわち人間が操っているのではないNPC(Non Player Character)のサービスを開発しているんですが、将来そのAIキャラクターに傷つけられたという人が出てくるかも知れない。そのときに責任の所在はどこにあるのかという問題は、当然出てきますよね。
 


ー自動運転の車が事故を起こしたら誰が責任を取るのか、という問題にも似ていますね。
 
まさに同じ問題です。他の2つの見出しに関しても、非常に現実的だと思います。これからどんなスピードでメタバースが普及していくのかわかりませんが、今から情報を集めて「想像を巡らせておくこと」がとても重要だと思います。そのためのUoCのゼミなんだと思っています。




取材・文:張江浩司



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