2022.12.12

創造性ゼミ 2022

『五感コミュニケーション - カラダで感じる、カラダで伝える -』〜創造性ゼミ2022を終えて

UNIVERSITY of CREATIVITYは、14の「創造性ゼミ2022」を開講しました。
それぞれのゼミが挑んだテーマは、創造性との関係を比較的容易に想像できるものもあれば、直感的には連想しにくいものまで幅広く、そこに集ったゼミ生たちの個性がお互いに刺激し合いながら、新たな価値が同時多発的に生まれる場となりました。
UoCプレスチームは、この学びの港を編み上げた各ゼミのプログラムディレクターにインタビューを行い、ゼミ生がどのような気付きを得ていたか、そしてどのような変化があったのか、深掘りを試みました。

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『五感コミュニケーションが私たちをより創造的に』



人間本来の伝える力を取り戻す

 
──なぜ五感をテーマにされたんですか?

昨年のCreativity Future Forum (CFF) で手話エンターテイナー団体、oioiさんのセッションを見て、私は涙を流すほど感動しました。コロナ禍で、どんどん「生」の体験が薄れていますよね。マスクで自分たちの表情を意識しなくなったり、画面越しの会話やテキストのやり取りが当たり前となったり。でも声なしで、顔の表情と手振りで、一生懸命全力で伝えるoioiさんの姿を見て、無音だけれども画面から溢れ出るエネルギーに感動し、久しぶりに伝える必死さと情熱を感じ、人間本来の伝える力ってこれだよな、と改めて実感したのがきっかけです。


──五感というより「五感を使ってのコミュニケーション」がテーマなんですね
 
そうですね。受けとる側としては自分たちの五感を研ぎすませることで感じる力や相手を理解する力を高めること。伝える側としても今まで言語しか使ってなかったところを表情や声のトーン、身体を使って表現することで新たな表現方法と出会うこと。そんな今までとはまた違うコミュニケーションのあり方を探るゼミでした。


感覚は自分の想像を遥かに超える

 
──創造性という面ではどうでしょうか?
 
oioiさんのセッションから強く感じたのは「制限の中から生まれるクリエイティビティ」です。普段当たり前のように行なっていることができなくなった時、人は創造的にならないと乗り越えられない。
 
ゼミのとある回では目隠しをしてコミュニケーションに纏わるミッションに挑んでもらいました。まずそれ自体に想像力や妄想力が問われますよね。視覚が使えないので聴覚や触覚がいつも以上に敏感になる。聴覚によって距離感を把握したり、触覚によって身の回りの物理的安全性を確かめたり。場合によっては嗅覚で異臭を察知したり、逆に食べ物を嗅ぎ付けたり。そして、様々な感覚で得た情報を結びつけて、状況を理解しようとする。



──そんな風に認識を改めたり、遠いものごとが結びつくのはアイデアの源泉でもありますよね

ゼミ生が言っていたのは「言語を通してだとどうしても削ぎ落とされてしまう要素があり、全てを伝えきれない・受け止めきれないが、感覚を通してだと言語以上のものを伝えられる・感じ取れる」ということ。言語だと知ってる範囲の情報に限られてしまう。しかし、感覚的なものは自分の知り得ないことまで受発信できる。そんなことを可能とする五感は創造性の源泉じゃないかと言ってくれたのですが、その通りだと思います。



実際にアイドルになって人前で踊る

 
──そんなoioiさんの聴覚をテーマにした回からゼミが始まったそうですが
 
普段私たちは「喋る」ことを当たり前にしていて、日々「言語」に頼った生活をしていますが、それが奪われた時、人間はどうするのか。「今日は参加費としてあなたの『声』を頂きます」と2時間無音の状態でお題を共にこなすというセッションからゼミが始まりました。





──私が見学させて頂いた回は本物のアイドルの振付師である世界的ダンサーのTAKAHIROさんによるセッションで、ゼミ生がアイドルになりきり、実際にお客さんの前でオリジナルの曲でデビューするという驚くべき回でした。毎回独立した企画なんですね。

ダンスは「身体的非言語の世界」ということで、自分のコンフォートゾーンから抜け出し、全身を使って表現することを体験してもらいました。慣れていない方は、最初戸惑う方もいましたが、このセッションでは多くのゼミ生が自ら殻を破り、ある種の限界を突破し、新たな自分に出会うということを経験されたと思います。



他にも嗅覚や味覚を含む様々な感覚に特化したセッションも行いました。そして、非言語的「感じる」感度が高まったうえで、改めて「言語」とも向き合うべく「翻訳力」をテーマとするセッションも行いました。そこではグループでコピーの解釈をしてもらったり、逆にとある事象に対するコピーを考えてもらうワークをしました。感覚的に考えが一致したとしても言葉に落とし込んだ時に合意に至ることができるのかを探ったり、また、同じ「コト」に対する解釈・翻訳の仕方が人それぞれでどれくらい違うのかを実感してもらいました。



そのような認識の違い及び共感を味わった上で、コミュニケーションの本質などについてもさらにディスカッションを重ねました。
 

五感コミュニケーションの可能性

 
──どれもおもしろそうですがこれらを通じてどのような狙いがあったんでしょうか?
 
ゼミ生のみなさんにはこのゼミを通じて、自分の中に眠っている伝える力を掘り起こし、自分ならではの新たな表現方法を発見したり、感じる力の感度を高めてもらえたら良いなと思っていました。

実際にゼミの過程で、殻を破って変わられた方も見受けられて、その成長は嬉しかったですね。

また、どんどんシステマチックになっていく世の中に、より非言語的感性・コミュニケーションを注入することで様々な社会課題を解決できるのではないかと考えていました。

最後の方のセッションでは五感をどのような場面に活かすとより心地良いコミュニケーションを図れるか、どのような場面に感覚的要素が足りていないかなどをたくさん議論しました。



ゼミ内でも活発なコミュニケーションが生まれ、考えが創発される
 

──実際みなさんはどのようなものを得たんでしょうか?
 
そもそも「五感コミュニケーション」という概念の捉え方が人それぞれなので、持ち帰ったものは各々全然違うと思います。ですが、振り返りの中でたくさん印象的なキーワードが出ました。
 
例えば「頭で考えたものより身体で感じたものの方が信頼できる」こと。
 
言葉にしてしまうと様々な要素が削ぎ落とされたり、捉え方が違うかもしれないし、いくらでも理由付けできてしまうので、どこまで嘘でどこまで本当か正直なところわからない。けれども、感覚は嘘を付かない。触れただけでわかることがある。そして、感じること=自分ごと化することでもある。なので、身体で感じる「生」のものは信頼できると多くのゼミ生が感じていました。



そして「感覚とロジカルの二面性」。
 
五感コミュニケーションとは?という議論をゼミを通して重ねてきました。その中で、一人のゼミ生が「思考を介すると直感が鈍ってしまうように感じる」と言っていました。本人はコミュニケーションをする前に考えすぎてしまうタイプで、それが悩みなんだそうですね。もしかしたら感覚と思考の連動的作用が重要(理想)で、直感的・感覚的に素直に思っていることを発信するのと、論理的に考えていることを発信するのと、どちらも自由自在に行き来できるようになれることが、私たちが究極的に目指したいものかもしれないねとも話しました。
 
コミュニケーションそのものについてもかなり対話をしました。そこでは「コミュニケーションには無関心→理解→共感という3つのレイヤーがあるのではないか」という仮説に至りました。必ずしも共感は必要ない。けれどもお互いの違いも含め理解し合うことは大切で、そのためには相手への尊重が必要。ただの無関心で終わらせず、お互いに対してリスペクトを持ち合うフェーズまで持っていくためにはどうしたらいいのかという議論もたくさんしました。



──オリジナルの五感コミュニケーションワークショップを考案するというのが修了制作のお題でしたが、実際どのようなワークショップが生まれたんですか?
 
様々な方向のアウトプットがあり、どれも本当におもしろく、発見だらけでした!例えば、日常の中で照明の力を改めて問い直すワークショップ、お互いの触覚は果たして共有できるのかを探るための研究、重度身体障害者の方とコミュニケーションを図り究極的なコミュニケーションを体感するリトリート、言葉と音楽とダンスを掛け合わせたセッション。その他にも自分を心身共に整えるための五感チューニングワークショップ、より自分と向き合い自分を知るための五感旅、夜の砂場で手触りに特化したアクティビティ、五感関心・耐久度相関チェックなど。また、五感で値段を付けるフリーマーケットを行い、普段とは違う物差しで世界を捉えてみたら人間の感覚・感情はどのように変化するのか?というのを探る企画を考案してくれたゼミ生もいました。

全員が本当に想像力豊かで、改めて五感コミュニケーションの可能性を感じました。全員のワークショップを並べたら、それでゼミになってしまうかも?!と思ってしまったくらい!これらのアウトプットを通して、改めて五感コミュニケーションにより私たち人間が創造的になれるヒントがあると強く感じました。



取材・文:大北栄人



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